後悔がない終活をするなら、必ず知っておきたい「遺言書」の書き方
遺言書に何を書くかは、本人の自由ですが、書き方の形式は法律で定められています。形式を少しでも間違うと、せっかく書いた遺言書がすべて法規に無効となるおそれがあります。ここでは、遺言書の書き方の基本について、わかりやすく解説しています。
自分の人生が終わるとき、あるいはその後のために準備する「終活」に取り組んでいる人が増えています。
ご自身の人生の終わりから逆算して、現時点の日常をどのように送り、今は何をすべきかを考えることで、より毎日が充実していくこともあります。
また、この世を去った後に、家族に迷惑をかけたくないという思いから、遺産相続がスムーズに進むように遺言書などを備えておく人も多いです。遺言書は、この世に残す最後の重大なメッセージですから、後悔しないよう確実に作成しておきたいところです。
この記事では、終活に取り組む方であれば、必須の知識ともいえる「遺言書の書き方」について、基本的な方法を解説しています。
遺言書の書き方は、民法で定められています
遺言書は、自分自身で作成することができます。誰にどの財産を渡したいか、特別に相続分を増やしたい相続人を指定して、その希望を書き残すこともできます。あるいは、財産を渡したくない相続人を廃除する意思表示を書くこともできます。
ただし、民法という法律の第960条には「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と定められています。遺言の内容はあなた自身で決められますが、民法で規定されている形式の通りに書かなければ、それは遺言としての法的な効力が認められず、単なる「手紙」としての機能しか備わりませんので、くれぐれも注意してください。
では、民法では、遺言書の書き方についてどのように定められているか、項目ごとに整理してわかりやすくお伝えします。
スマホやパソコンで書いても無効
現代では、紙にペンで文章を書く機会も減って、スマホやキーボードで文字入力するほうが多くなっている人が大半でしょう。
しかし、いつものくせで遺言書をスマホやパソコンで書き残そうとしてはいけません。プリンタで印字しても、音声や動画でメッセージを残しても無効です。
遺言書は原則として、自分の筆跡で、紙に書き残さなければなりません。もし、遺言書をあなた以外の誰かが作ったのではないかと疑われた状況でも、筆跡鑑定によって証明する余地があるからです。
筆記用具や用紙に、指定はありません。いちおう、チラシの裏に鉛筆で書いても有効だとされています。しかし、これから何年後、何十年後には、経年劣化によって読みにくくなってしまうおそれがありますので、注意してください。特に鉛筆の字は消しゴムで消せますので「誰かが書き換えたのではないか」と、余計な疑いや争いを生じさせかねません。
ちゃんとした紙に、ペンを使って書いておくのが一番です。ペンの種類や文字色なども法律上の指定はありませんが、読みにくい色や劣化しやすい色は避けたいところです。字は下手でも構いませんので、丁寧にゆっくりと、誰でも読みやすく筆記するように心がけましょう。
遺言書に必ず書かなければならないこと
遺言書の必須事項は「本文」「日付」「署名」「押印」です。
本文は日本語以外の言語を使って書いても構いません。家族へのお礼など、法的な効力がないメッセージを添えてもいいでしょう。むしろ、相続争いが生じかねない状況で遺言書を残す場合には、感情的な対立を生まないためにも、法的な意味を含まないメッセージをどのように書くかがむしろ重要となりえます。不本意な受け止められ方をされないよう、文章の表現については、それぞれの家族の立場や性格なども考えに入れながら熟慮したいものです。
日付は、年月日まですべて書かなければなりません。年月だけですと、遺言書すべてが無効として扱われますので、注意してください。「○年○月吉日」でも無効だとする最高裁判所の判例もあります。
署名は、苗字だけ、または名前だけでも、雅号や通称、ニックネームでも、誰が書いたのかが特定できる状況なら有効だと考えられています。しかし、戸籍に登録されている氏名を明記することが最も無難で確実です。
押印は、拇印でも構わないという判例がありますから、印鑑をどうしても用意できない緊急の状況でも遺言を残すことは可能です。
一度書いた遺言書を書き換えたい場合は、どうすればいい?
原則として、一度書いた遺言書を書き直すことはできません。遺言書に書いた日付よりも後の段階になって、書き足したり削除したりすることもできません。
どうしても遺言書を書き直さなければならない場合には、改めて「撤回の遺言書」を作成した上で、新たな遺言書を作成します。
やはり自分の字で「○年○月○日に作成した遺言は取り消す」と書き、日付と署名押印をしてください。
その上で、新しい遺言書を作成します。
取り消した遺言書を残したままでも、日付を比較すれば、どちらが新しい遺言書なのかは判別できます。しかし、古い遺言書の筆跡を使って内容が偽造されるなど、無用なトラブルを生んでしまう要因にもなりかねませんので、不要となった旧遺言書は確実に破棄しましょう。
遺言書は厳密に定められた法律行為であり、少しでも形式を間違えば全文が無効になるおそれがあります。迷ったら、町の法律家である行政書士に相談することをおすすめいたします。