遺言書の書き方と注意事項
相続争いを防ぐため、また特定の人物に遺産を残すためには、遺言書の作成が不可欠です。
そこで今回は、遺言書の作成方法や、遺言書が無効とならないための注意点などをまとめました。
この記事が間違いのない遺言書作成の手助けになれば幸いです。
遺言書の種類
遺言書には4つの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
作成する遺言書を決めるにあたり、まずはどのような違いがあるのか知っておきましょう。
自筆証書遺言
自分で書き記す遺言書です。
ペンと紙さえあればいつでもどこでも作成できるので、大変お手軽な作成方法と言えます。
その反面、偽造もされやすく、幾度となく相続争いを引き起こしてきました。
自筆証書遺言での相続争いを避けるには、法務局の遺言保管制度を利用するのが良いでしょう。
公正証書遺言
最も広く利用されている遺言書です。
あなたの証言を元に、公証人が遺言を代筆してくれます。
プロが作成するため無効になりにくく、かつ公証人役場で保管されるので偽装の余地がありません。
ただし相続に関係しない立会人2名が必要となりますし、数万円の作成費用を支払わなくてはなりません。
秘密証書遺言
遺言の執行まで、誰にも内容を知られることのない遺言です。
現在利用する人はほとんどおられません。
秘密証書遺言とは、公証人により「遺言書が存在する事実」のみを証明してもらい、内容は自分で書き自分で保管するものです。
公正証書遺言は遺言を代筆してもらうため、公証人と証人に遺言の内容を明かさなくてはなりません。
また自筆証書遺言では、遺言書の存在を相続人が知らないまま遺産相続が完了してしまうことがよく起こります。
これらの不都合を払拭してくれるのが秘密証書遺言です。
ただし誰にも内容を確認されないので、不備になるケースもあります。
公証人役場で証明してもらうための費用もかかります。
さらに遺言開封前には、本物の遺言書かどうかを調べる「家庭裁判所による検認」が必要です。
特別方式遺言
緊急時における遺言です。
たとえば、船や飛行機の遭難、伝染病による隔絶、疾病その他で死亡が迫っている場合が当てはまります。
特別方式遺言は死が迫っている際にできる遺言です。
そのため他の遺言書が作成できるようになり6ヶ月が経過すると効力を失います。
遺言書の作成手順
現在では、遺言書のほとんどが自筆証書遺言か公正証書遺言の2パターンです。
どちらにされても良いように、自筆証書遺言と公正証書遺言の作成手順をまとめました。
- 自筆証書遺言の作成手順
- 財産の把握
財産の全てを把握し、相続させられるものをリストアップします。
- 銀行口座の預貯金口座:通帳
- 株や金などの金融資産:金融機関名と残高、資産の種類
- 不動産:課税明細書など
- 車やその他の資産:読んだ人が分かるような詳細
財産を全てリストアップできたら、財産目録として一覧にまとめます。
相続の分配を決める
リストアップした財産について「誰に、何を、どれだけ」相続させるか決めていきます。
分配が偏っていると相続争いに発展しかねませんので、この作業は時間をかけて慎重に行うべきでしょう。
遺言書を作成する
財産とその分配が決定したら、遺言書の作成に取り掛かります。
書き出す前に、自筆証書遺言の民法上のルールを確認しましょう。
- 財産目録以外を全て自分で書く
- 作成日の年月日を正確に記す
- 氏名を記入し押印する
- 訂正する際は二重線・押印・末尾に「○行目○文字削除○文字追加」と記載
これらを踏まえて、遺言書に「誰に、何を、どれだけ」相続させるのかを正確に記してください。
このあたりに別紙の見本を挿入なさってください
- 公正証書遺言の作成手順
- 財産の把握
- 相続の分配を決める
財産の把握と相続の分配を決めるところまでは、自筆証書遺言と同様です。
書類を集める
公正証書遺言作成に必要な書類を集めます。
主に必要となるのは以下の書類です。
遺産の種類により必要書類が変わりますので、専門家や公証人役場に問い合わせておきましょう。
- 印鑑証明書
- 実印
- 戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 不動産の登記事項証明書や固定資産税評価証明書等
- 記帳済みの通帳
- 証人を準備する
公正証書遺言作成には2名の証人が必要です。
相続人となる可能性のある人や、未成年者、直系血族、雇用している人などは証人にはなれません。
相続に関わりを持たず、利害関係がない人を選ぶ必要があります。
自分で証人を準備できない場合は、行政書士や弁護士などに依頼するか、公証人役場で証人を準備してもらえます(別途費用が必要)。
公証人役場を調べる
「日本公証人連合会」のサイトから、最寄りの公証人役場を調べてください。
どこでも都合の良い役場で作成可能です。
たとえば「あまり自宅から近いと相続人と鉢合わせして気まずい思いをしそう…」と不安に感じるなら、遠方の公証人役場でも構いません。
事前打ち合わせ
作成してもらう公証人役場が決まったら、遺言書を作成する前に担当者と打ち合わせを行います。
内容は、遺言をする人のことや相続人、証人はどうするのか、遺言の詳細などです。
情報の共有が済むと、最後に遺言作成の日時と場所を決めて終了します。
原則として、公正証書遺言は公証役場で作成することになります。
ただし体の不自由な人や役場まで行けない人には、公証人が指定の場所まで出張してくれます(出張費用が別途必要)。
遺言書作成
指定の場所と日時に公証人・遺言者本人・証人2名が集まります。
打ち合わせを元に作成された遺言書の原案を公証人が読み上げ、遺言者本人と証人2名が確認し、納得できれば遺言書原本に署名押印します。
遺言書の正本と謄本を受け取り、公証人に手数料を支払います。
これで公正証書遺言の完成です。
作成した公正証書遺言の原本は、原則として20年間は公証役場に保管されます。
遺言書を作成しても無効になるケースと回避方法
遺言書は全て有効になるわけではありません。
没後に無効とされないよう、注意すべき点と回避方法をまとめました。
自筆証書遺言をパソコンなどで入力した
自筆証書遺言は、財産目録を除く全ての文章を遺言者が自分で書かなければなりません。
例えばパソコンで作成した遺言書をプリントアウトして、署名押印しても無効となります。
自分で書く時間が取れない場合は、公正証書遺言に変更して対処しましょう。
自筆証書遺言の日付を「吉日」にした
「吉日」など実際の日付以外が記載されていると、無効とされてしまいます。
作成日は年月日で正確に記しておきましょう。西暦・和暦どちらでも構いません。
証人が足りていない状態で作成された公正証書遺言
遺産を相続する人など、証人になれない人が立ち会っていた場合、証人の数が足りていないとして遺言書は無効となります。
証人になれる人なのかどうか分からない場合は、事前に公証人役場の担当者に相談しておきましょう。
遺言書作成を専門家に依頼する時の費用相場と選び方
遺言書作成にあたり重要なことは「相続トラブルの防止」ではないでしょうか。
実は公証人による公正証書遺言の際には、「無効とならない遺言」の作成はできますが「相続トラブルを防止できる遺言」にするためのアドバイスは受けられません。
あくまでの代筆してくれるだけなのです。
遺言による相続人同士の不毛な争いを防ぐには、専門家と共に遺言書の内容を検討することをお勧めします。
弁護士
費用:30万円前後
弁護士は相続人間のトラブルを解決できる唯一の専門家です。
つまり相続トラブルをいくつも解決してきた弁護士は、トラブルが起きにくい遺言書の作成方法を知っていることになります。
司法書士
費用:10万円前後
不動産の名義変更を行えるのが司法書士です。
遺産に不動産が含まれる場合は、没後の名義変更も見据えて遺言書作成を依頼するのも良いでしょう。
行政書士
費用:7万円前後
遺言関連を基本業務としている行政書士は、遺言書作成も積極的に受任しています。
遺言書作成経験が豊富な行政書士は、依頼料も安く抑えられる上に適切なアドバイスをしてくれますよ。
まとめ
現在、一般的な遺言書は自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言は無料で手軽に作成できますが、相続人に発見されないなどの問題点があります。
一方で公正証書遺言は、費用はかかるものの無効にならない遺言書作成が可能で、原本も保管してくれるので紛失の心配がありません。
遺言書は相続争いを防ぎ、円滑に相続させるためのもののはずです。
どちらの作成方法であっても、相続トラブルを防ぐためのポイントは押さえておきましょう。
相続財産の種類や総額によって注意すべき点は異なりますので、まずは専門家に相談を。
北大阪相続遺言相談窓口では、遺言書作成のアドバイスも行なっております。
気がかりな点があるのなら、放って置かずに、早めに相談してくださいね。
あなたからのご連絡をお待ちしております。