遺言とは?遺言書の種類やメリット・デメリットを解説!費用や注意点も
当記事では、遺言書の作成や終活を検討している方に向けて、遺言書の種類やメリット・デメリット・費用について解説しています。自分で遺言書を作成する場合の注意点についても記載しているので、遺言書作成で困っている方は、ぜひ参考にしてください。
自分の死後、財産を誰にどのような形で引き継ぎたいのか意思表示することを「遺言」といいます。相続をめぐっては相続人同士がトラブルになることも多いため、法律で定められた方式で正しい遺言を残しておくことが大切です。
とはいえ、遺言書をどのように作成したらよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
当記事では、遺言書の作成や終活を検討している方に向けて、遺言書の種類やそれぞれのメリット・デメリット、費用感について解説いたします。自分で遺言書を作成する場合の注意点についても紹介しているので、終活準備を始めようとしている方もぜひ参考にしてください。
【この記事はこんな方におすすめです】
・遺言書の作成を検討している方 ・終活準備を進めようと思っている方 ・自分が亡くなったあとにスムーズに相続手続きを進めたい方 |
1. 遺言とは?
「遺言」とは、被相続人が自分の財産について誰にどのような形で残すのかを最終の意思表示として遺したものです。一般的には「ゆいごん」と読みますが、法律用語では「いごん」と読むことがあります。
遺言を書面にしたものを遺言書と言い、遺言書がある場合は原則として遺言書の記載通りに相続が行われます。相続においては、親族間でトラブルに発展することがありますが、遺言書に自分の意思を残しておくことで、相続争いを防ぐことができます。
死後、その遺言が本当に本人の意思に基づくものであるのかどうかを確認する術がありません。そのため、民法で遺言に関する厳格な方式が定められています。この方式に従った遺言である場合は、被相続人の意思として法的に保障されます。一方で、民法の方式に従っていない遺言は、法律上の効力を持ちません。
自分が遺言を遺す際は、民法の方式に従って作成する必要があります。
2. 遺言書で法的な効力を持つ事項
遺言が認められた場合に、下記4つの事項において法的効力が保障されます。
1.相続に関する事項 2.財産処分に関する事項 3.身分に関する事項 4.遺言の執行に関する事項 |
「相続に関する事項」では、誰がどの財産をどのくらい相続できるのかを指定することができます。法定相続分とは異なる相続分割合の指定も可能ですが、相続人の遺留分は侵害できないため、遺留分を侵害する内容の遺言書については、その遺言部分は無効となる可能性があります。
①相続に関する事項 ・相続人の廃除、廃除の取り消し ・相続分の指定またはその委託 ・遺留分侵害額負担割合の指定 ・遺産分割方法の指定と分割の禁止 ・特別受益の持ち戻しの免除 ・相続人相互の担保責任の指定 ・祭祀主宰者の指定 |
「財産処分に関する事項」では、法定相続人以外の人や団体に相続する「遺贈」について定められています。遺贈とは、財産の割合を指定して特定の誰かに財産を引き継がせることを指します。個人だけでなく法人や団体に財産を引き継ぐことも可能です。例えば、生前お世話になった親族(長男の嫁など法定相続人でない人)や愛人、所属していた団体などです。
②財産処分に関する事項 ・遺贈 ・財団法人に向けた財団の拠出 ・信託の設定 |
「身分に関する事項」では、婚姻関係にないパートナーとの子どもや、未成年の子どもがいる場合に、相続人として指定することや第三者を後見人に指定することが出来ると定められています。婚姻関係にない子どもは法定相続人にはなりませんが、遺言で認知することで法定相続人として認められるようになります。また、相続人に未成年者が含まれている場合、相続に必要な手続きをするために後見人の指定や、未成年相続人の遺産相続の管理を第三者に委ねることが可能です。
③身分に関する事項 ・婚姻外の子の認知 ・未成年後見人の指定 ・未成年後見監督人の指定 |
「遺言の執行に関する事項」では、遺言書に書かれた内容を実行するために必要な手続きを任せる遺言執行人を指定することができると定められています。必要な手続きとは、被相続人の預貯金口座の解約手続きや、不動産名義の変更、財産目録の作成などです。
遺言執行人を決めておくことで、遺産相続がスムーズに進みます。相続人や親族を指定することもできますが、弁護士や税理士など利害関係のない第三者に依頼することをおすすめします。
④遺言の執行に関する事項 ・遺言執行者の指定または指定の委託 |
3. 遺言書の種類
普通方式遺言 | 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言 |
特別方式遺言 | 危急時遺言 隔絶地遺言 |
遺言書には、大きく分けて「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類があります。
通常の日常生活の中で遺言を作成する場合は、普通方式で遺言書を作成します。相続人に死期が迫っている時など、普通方式遺言を作成できない場合のみ特別方式遺言を利用することがあります。そのため、遺言書の多くは普通方式の遺言です。
普通方式遺言は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類に分けられます。
3−1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、被相続人が自筆で作成する遺言です。本人が、遺言書の本文全文・日付・氏名を書面に記し、捺印したものです。特別な手続きは必要なく、紙とペンと印鑑さえあれば誰でも気軽に作成できます。そのため、最も多く利用されているのが、この自筆証書遺言です。
用紙の指定はありませんが、PCで作成されたものや代筆されたものは認められず、自分で書いたものでなければ認められません。気軽に作成できる反面、内容に不備があった場合は法律上無効となる可能性があるので、必ず作成方法について確認した上で作成しましょう。可能であれば専門家のチェックを受けることをおすすめします。
3−2. 公正証書遺言
公正証書遺言とは、2人以上の証人が立ち合い、公証人が本人から遺言内容を聞き取りながら作成する遺言のことです。
法律の専門家である公証人が作成するため、法的に無効になる可能性はほとんどありません。また、作成された遺言書は公証役場で保管されるため、遺言内容が書き換えられたり、存在が隠ぺいされる心配もありません。
手間や費用はかかりますが、最も確実な方法です。
3−3. 秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書を公証役場に持ち込み、存在を承認してもらう遺言のことです。
自分で作成・保管を行うため、誰にも内容を知られずに、遺言書の存在のみ認識してもらうことができます。ただし、遺言書の内容は自分しか知らないため不備があった場合は法的に無効になる可能性があります。また、保管も自ら行うため紛失のリスクも避けられません。
秘密証書遺言を作成する場合は、遺言書の正しい作成方法について調べておくこと、作成後に失くしたり盗まれたりしないよう保管することに注意が必要です。
4. 自筆証書遺言を作成するメリット・デメリット・費用
自筆証書遺言は、手間や費用をかけずに手軽に作成できますが、不備があると無効になるため作成要件を厳格に守って作成する必要があります。
自筆証書遺言を使うメリットやデメリット、費用について解説します。
4−1. メリット
・手軽に作成できる ・いつでも修正できる ・費用が掛からない ・遺言書の内容や存在を秘密にできる |
自筆証書遺言の最大のメリットは、自分1人で作成できる手軽さです。公正証書遺言や秘密証書遺言は公証人の強力や公証役場まで出向かなければいけませんが、そのような手間は必要ありません。紙とペンさえあれば作成できるため費用もかかりません。
書き直す場合は、古い遺言書を自分で破棄して新しい遺言書を作成するだけです。
公正証書遺言であれば公証人や証人に遺言内容を知られてしまいますが、自筆証書遺言であれば、作成後に封すると誰にも見られる心配はありません。存在すら知られずに作成することができます。
4−2. デメリット
・必ず本人が自筆しなければいけない ・不備があると遺言が法的に無効になる ・遺言書の存在に気付いてもらえない可能性がある ・紛失や偽造されるリスクがある ・家庭裁判所の検認が必要 |
自筆証書遺言は本人の自筆であることが必須ですので、パソコンでの作成や代筆はできません。遺言書作成のルールに則った遺言書でなければ、法的効力は持たないため、内容に不備があり無効になるケースが散見されます。必ず作成方法について事前に調べておきましょう。
また、保管も自ら行うため、遺言書の存在に気付いてもらえない場合や、相続人が意図的に破棄・隠ぺいをする場合があります。作成や保管には厳重な注意が必要です。
本人の死後、遺言書を見つけた人が家庭裁判所に遺言書を持っていき、検認をもらって初めて法的な効力を持つことができます。
4−3. 費用
自筆証書遺言は、自ら作成・保管をするため基本的に費用はかかりません。
ただし、遺言書補完制度を利用する場合は1件3,900円の手数料がかかります。
5. 公正証書遺言を作成するメリット・デメリット・費用
公正証書遺言は、他の遺言書と異なり、記載内容の不備で無効になる可能性が低く、確実に遺言書を遺すことができます。
ここでは公正証書遺言を作成するメリットとデメリット、費用について詳しく解説します。
5−1. メリット
・要件の不備による無効のおそれがほとんどない ・文字が書けなくても遺言書を作成できる ・家庭裁判所の検認が不要 ・相続争いが起こりにくい ・偽装や隠ぺいされる心配がない |
公正証書遺言の最大のメリットは、遺言書が無効になったり、偽装や隠ぺいされるリスクがないことです。確実な遺言書を作成したい場合に適しています。
遺言内容は、2名の証人の立ち会いの元で公証人に対して口頭で伝えます。その内容を元に法律の専門家である公証人が遺言書を作成します。そのため、文字が書けない人でも遺言書の作成が可能です。話せない人は手話などの通訳を介して作成することも可能です。
家庭裁判所の検印は不要ですので、死後スムーズに相続手続きを始められるのも、公正証書遺言のメリットです。
5−2. デメリット
・作成にコストがかかる ・公証人と2名の証人に遺言内容が知られてしまう ・証人2名の協力が必要 |
公正証書遺言を作成するためには、公証人以外に2名の証人が必要です。相続や遺贈を受ける予定の方と、その配偶者・直系血族、未成年者、公証人の配偶者や四親等内の親族などは証人になることができません。自分で証人を見つけることが難しい場合は、公証役場で手配してもらうことも可能です。
公証人と証人には、遺言内容が伝わってしまうこと、作成に時間や費用が発生することは、デメリットといえます。
5−3. 費用
公正証書遺言の作成手数料は、相続する財産額によって決められています。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17,000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
相続財産の総額が1億円以下の場合は、11,000円が上記に加算されます。
また、病気などで公証役場に行けず公証人に来てもらう場合は、手数料が50%加算されることに加え、公証人の日当と現地までの交通費が発生します。
6. 秘密証書遺言を作成するメリット・デメリット・費用
秘密証書遺言は、自分で作成した遺言書を構成役場に持ち込み、存在を承認してもらう遺言のことです。自筆証書遺言や公正証書遺言と比べると使用されることが少なく、実際はあまり利用されていません。
秘密証書遺言のメリットとデメリット、費用について詳しく解説します。
6−1. メリット
・自作する遺言書はパソコンで作成したり代筆でも可能 ・遺言書の内容を秘密にできる ・公正証書遺言と比べると公証人に支払う手数料が安い |
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に自分で遺言書の作成・保管を行います。そのため、遺言書の内容が漏れることはありません。作成する遺言は、自筆証書遺言と違いパソコンでの作成や代筆でも可能です。
公正証書遺言よりも、手数料は安く抑えられます。
6−2. デメリット
・書類の不備により法的効力が無効になる可能性がある ・家庭裁判所の検認が必要 ・紛失や隠ぺいのリスクがある |
書類の内容は確認してもらえないので、書類に不備があると法的効力は認められません。自ら保管するため、紛失や隠ぺいのリスクがあります。公正証書遺言と比べると確実性は低くなってしまうことがデメリットです。
自筆証書遺言と同様に、家庭裁判所の検認を受ける必要があるため、相続手続きを開始するまで時間がかかります。
6−3. 費用
公証人に支払う手数料は、遺言書の内容に関係なく11,000円です。
また、秘密証書遺言を作成するためには、2名の証人が必要です。相続や遺贈を受ける予定の方と、その配偶者・直系血族、未成年者、公証人の配偶者や四親等内の親族などは証人になることができません。自分で証人を見つけることが難しい場合は、公証役場で手配してもらうことも可能です。その場合、証人1名あたり1万円の証人手数料が発生します。
公正証書遺言と比べると費用はかなり抑えられますが、その分遺言書の確実性は下がってしまうため、確実性を重視するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
7. 遺言書を作成するときの注意点
遺言書を自分で作成する際は、不備がないよう細心の注意が必要です。不備があると法的効力が認められず遺言書が無効となります。また、相続争いを招く原因となりますので、下記に注意しながら作成しましょう。
・財産目録を除き、全て自筆する(秘密証書遺言は代筆やパソコン入力可) ・日付は年月日を記載する(「〇月吉日」などは不可) ・署名押印を忘れない ・長期保存できるように破れにくい丈夫な用紙を使用する ・筆記用具はボールペンや万年筆など消えにくいものを使う ・普段通りの筆跡で丁寧に書く ・誤字脱字に気を付けて正確に記載する ・修正する場合は、訂正部分を二重線で消して正しい文言を吹き出しで書き入れる ・修正箇所には「〇字を削除 〇字加入」と書いて署名押印をする ・あいまいな表現は使わない ・トラブル防止のため法定相続人の遺留分を侵害する内容は控える ・1つの財産を複数の相続人で共有する内容はできるだけ避ける ・遺言執行者は必ず明記する ・相続財産に預金を記載する場合は、金融機関名・支店名・口座番号を記載 ・不動産がある場合は権利書や登記謄本を参考に具体的に記載する |
8. まとめ
自分の死後、財産を誰にどのような形で残したいのか意思表示するために作成されるのが「遺言書」です。遺言書がある場合は、原則として遺言書の記載通りに相続が行われますが、不備があった場合は本人のものと見なされず無効になってしまいます。
遺言書の作成は、複雑なルールが定められているため、無効になるケースは珍しくありません。自分の死後、遺言書として正しく受理されるためには、ルールを確認しながら慎重に作成しましょう。
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