公証役場で作成する遺言(公正証書遺言)は自筆証書遺言と何が違うのか
「公証役場で遺言書の代筆をしてもらえると聞いたけど、一体どういうもの?」
「自分で書く遺言とはどう違うの?」
遺言書作成を考え始めると様々な情報が一気に流れ込んできて、よく分からなくなってしまいますよね。
そこで今回は公証役場で作成する遺言「公正証書遺言」と自分で書く遺言「自筆証書遺言」の特徴と違いについてまとめました。
この記事を参考に、ご自身にピッタリの遺言方式を選択なさってください。
- 公証役場での作成する遺言(公正証書遺言)とは
- 公証人が遺言書を代筆してくれる
原則として遺言書は本人が自筆することになっています。しかし公正証書遺言に関しては、公証人が代筆してくれます。
なお平成12年の民法改正により、口頭以外で遺言内容を伝えることが認められました。口のきけない人や耳の聞こえない人でも公正証書遺言を作成できるようになったのです。
- 作成した遺言書はそのまま保管される
公証人が代筆した遺言書は、原本をそのまま公証役場に保管します。
ですから遺言書を失くす可能性がありません。
相続人に前もって「公正証書遺言を公証役場に預けてある」と伝えておけば、相続人も自宅内を探し回ることなくスムーズに遺言書を閲覧できます。
- 遺言が無効になりにくい
遺言には正しい書き方があり、間違えていると「無効」とされて相続トラブルの原因になってしまいます。しかし公正証書遺言を利用すると、公正証書遺言の作成方法に熟知した公証人が代筆してくれるので無効になりにくいのです。
ただし「絶対に無効にならない」というわけではありません。公証人は正しい書き方で遺言書を作成してくれますが、内容に関してはノータッチです。遺言内容が民法に反していたとしても、特に指摘を受けることはありません。確実に実行される遺言を残すなら、行政書士等の専門家とともに草案を作りましょう。
- 家庭裁判所の検認が不要
原則として、遺言書が発見された場合は家庭裁判所の検認が必要です。検認とは、相続人立会いの元で遺言書を開封し、内容を確認する作業です。確認といっても法的に有効か無効かの判断はされません。しかし検認作業が済んでいないと、その後の相続手続きに進めないのです。また家庭裁判所への申し立てから1ヶ月程度かかることもあり、相続手続きが長引く一因でもあります。
ですが公正証書遺言は、検認作業が必要ありません。遺言書作成後すぐに公証役場に保管されるため、偽装される恐れがないからです。検認作業がないだけでも、相続人の負担はかなり軽くなりますよ。
- 証人2名の準備が必要
本人が確かに公正証書遺言を作成したとして、作成時に証人2人の立会いが要求されます。なおこの証人たちの前で公証人ができあがった遺言の内容を読み上げますので、口の固い人に来てもらわなければなりません。なお相続に関係する人は証人にはなれません。
一般的には、公正証書遺言の草案を一緒に作成した専門家に、証人立会いまで依頼することが多いようです。
- 手数料が発生する
作成時には公証役場に手数料を支払います。手数料令という政令で定められているため、法改正以外での料金変動はありません。
手数料は遺言書に記載する財産総額によって決まります。
たとえば
遺産総額100万円以下の場合の手数料:5000円
遺産総額1000万円〜3000万円以下の場合:2万3000円
遺産総額につれて少しずつ手数料も値上がりし、
遺産総額10億円を超える場合:24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を追加した金額
まで増加します。
- 自分で作成する遺言(自筆証書遺言)とは
- 紙とペンがあればいつでもどこでも作成できる
最大のメリットは、いつでもどこでも作成できることです。
遺言を残そうと思い立ったらすぐに書き始められますね。
公正証書遺言は公証役場とのやりとりを経てから作成するので、思い立ったその日に遺言書ができあがることはありません。
- すべて自分で手書きする
財産目録以外のすべてを手書きで作成します。
財産目録とは、保有している資産(土地・建物・預貯金等)とすべての負債(借金等)について一覧に見やすくまとめたものです。
財産目録以外が一部でもパソコンで作成されていたり、他人が代筆していたりすると、その遺言書は無効となります。
- 遺言書は自宅や法務局で保管する
できあがった自筆証書遺言は、自宅か法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して保管します。「自筆証書遺言書保管制度」は令和2年7月に誕生した新しい制度で、書き上げた自筆証書遺言を死後50年まで継続的に保管してくれるサービスです。保管にも閲覧にも一時的に数千円の手数料が発生しますが、紛失や偽装の恐れがなく、また検認も不要です。
- 書き方や内容を誤ると無効となる
手書きしなかったり、正確な日付を入れていなかったり、必要な情報が抜けていると無効になってしまいます。
ご自身で遺言書を作成する際には、遺言書の正しい書き方を学んでおくか、専門家に相談することを強くオススメします。
- 遺言書を開封する前に家庭裁判所の検認が必要
法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用せず、自宅で保管していた遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認には戸籍謄本などの書類も必要となるため、完了までには1ヶ月前後かかることも。
- 費用がかからない
すべて自分で作成すれば費用はかかりません。
将来、書き直す可能性があるのなら、費用のかからない自筆証書遺言が便利です。
- 公証役場で遺言書を作成する流れ
- 必要書類を揃える
最低限必要となる書類は以下のとおりです。
- 運転免許証等の本人確認書類
- あなたと相続人との関係が分かる戸籍謄本
- 相続人以外の人に財産を譲りたい場合はその人の住民票
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)と固定資産評価証明書または課税証明書
- 証人2人の氏名・住所・生年月日・職業のメモ
遺言内容によっては、この他にも追加で書類が必要となることもあります。公証役場に連絡したときに、必要書類を聞いておきましょう。
- 証人を2人用意する
証人になってくれる人を探して依頼しておきます。
遺言書作成を依頼した専門家に証人となってもらうことが多いようです。もし証人が用意できない場合は、事前に公証役場に申し出ておきましょう。費用が発生しますが証人を用意してくれます。
- 公証役場を選び打ち合わせを行う
日本全国どこの公証役場でも構いません。
ご都合のよい公証役場を選んでください。
電話や窓口で公正証書遺言を作成したい旨を申し出ましょう。
公証人と打ち合わせを行い、遺言内容や日程を詰めます。
- 証人2人と共に公証役場に赴く
約束の日時に公証役場へ赴きます。
本人確認書類や印鑑等を忘れずに持参してください。
証人は公証人から本人確認や質問を受けます。
なお公証役場ではなく、病院や施設等へ公証人に来てもらうこともできます。
- 遺言の内容を口頭で公証人に伝える
書き残したい内容を公証人に口頭で伝えます。
口のきけない人や耳の聞こえない人は、筆記で伝えてください。
- 公証人が筆記し、遺言者と証人2人に読み聞かせる
公証人が作成した内容を、遺言者と証人2人に読み聞かせます。
声が聞こえない人は、手話通訳等で確認します。
- 遺言者と証人2人が遺言書に署名捺印
内容に間違いなければ遺言書に署名捺印します。
- 公証人が署名捺印
作成した公証人も署名捺印します。
- 手数料を支払う
作成手数料を支払い、遺言書作成は完了です。
あとは公証役場で大切に保管してもらえます。
- 公証役場で遺言書作成を行うなら専門家のサポートを受けることがオススメです
公証役場で遺言書を作成すれば、無効になりにくい遺言書が出来上がります。しかし税金を安くできる相続の方法や、遺留分(相続人が最低限受け取れる遺産の割合)等に関してはアドバイスしてもらえません。確実に有効となる遺言書を作成されるなら、行政書士等の専門家のサポートが必須です。北大阪相続遺言相談窓口では、各種専門家と連携し、あなたの希望を叶える遺言書のご提案をいたします。まずは無料相談をご利用ください。