遺言書の効力はどこまで認められる?法的に有効な遺言書の書き方や注意点を解説
遺言書が見つかった場合は、原則として遺言書の記載通りに相続手続きが進められます。
ただし、その遺言書がルールに則っていない場合は、無効になる場合があります。
当記事では、
・法的効力が認められる遺言書の種類
・効力がおよぶ範囲
上記について解説しています。
遺言書の作成時の注意点についても紹介しています。
遺言書の作成を検討されている方も、是非参考にして下さい。
【この記事はこんな方におすすめです】
・遺言書を発見した方 ・遺言書の内容に不満がある方 ・自分の死後に備えて遺言書を作成したい方 ・遺言書の法的効力がどこまで認められるのかを知りたい方 |
法的効力が認められる遺言書の種類と作成時の注意点
相続が発生した場合、被相続人(亡くなった方)の遺言書があれば、原則として遺言書の記載通りに相続が行われます。
ただし、その遺言書が法律で規定されたルールに従っていない場合は、法的効力が認められません。
法的に有効とされる遺言書には、下記の5種類があり、それぞれに厳格なルールが設けられています。
普通方式遺言 | 自筆証書遺言 |
公正証書遺言 | |
秘密証書遺言 | |
特別方式遺言 | 危急時遺言 |
隔絶地遺言 |
遺言書は、「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類に分けられます。
被相続人に死期が迫っている場合など、特別な事情がない限りは、普通方式遺言によって作成されます。
ここでは、普通方式遺言である、
「自筆証書遺言」
「公正証書遺言」
「秘密証書遺言」
上記の3種類について、特徴や作成時の注意点を解説します。
※関連記事:遺言とは?遺言書の種類やメリット・デメリットを解説!費用や注意点も
自筆証書遺言
特徴 ・被相続人が自筆で作成する ・不備があり法律上無効になるケースがある ・相続発生時は家庭裁判所の検認が必要法務局が遺言書を保管してくれる ・「自筆証書遺言書保管制度」がある 作成時の注意点 ・無効にならないようルールを綿密に確認する ・相続人に破棄・隠ぺいされないよう保管に注意する |
自筆証書遺言は、本人が自筆で作成するため、形式は人によって様々です。
無効になるリスクを回避するため、弁護士などの専門家に相談しながら作成することがあります。
自分で保管していた場合は、発見した相続人が家庭裁判所へ届け出て検認を受ける必要があります。
自筆証書遺言保管制度を利用している場合は、法務局で保管されており、被相続人の死後、相続人へ通知がいく仕組みになっています。
公正証書遺言
特徴 ・公証人が作成する ・無効になることはほとんどない ・公証役場で保管されている ・相続発生時に家庭裁判所の検認は不要 作成時の注意点 ・手間と費用がかかるため作成する負担が重い |
公正証書遺言は、公証人が作成するため無効になることはほとんどありません。
公証役場で保管されるため、相続人が勝手に内容を書き換えたり隠ぺいすることはできません。
家庭裁判所の検認は不要ですので、被相続人の死後スムーズに、相続手続きを開始することができます。
作成時には手間と費用がかかるものの、確実な遺言書を作ることができます。
秘密証書遺言
特徴 ・被相続人が自分で作成する(代筆やパソコンでの作成も可能) ・不備があり法律上無効になるケースがある ・公証役場で遺言書の存在を認知してもらっている ・保管は自ら行う相続発生時は家庭裁判所の検認が必要 作成時の注意点 ・遺言書の存在は公証役場で認めてもらえるが内容のチェックは受けられない ・自筆証書遺言の保管制度を利用した方が費用を抑えられる |
秘密証書遺言は、自ら作成した遺言書を自ら保管するのですが、自筆証書遺言と違って遺言書の存在を公証役場で認めてもらっています。
ただし、内容まではチェックされませんので、法的に無効となる可能性があることに注意が必要です。
遺言書の法的効力が認められる範囲と内容
遺言書が有効であると認められた場合に、どこまで法的効力が発揮されるのでしょうか。
ここでは、法律で保障される遺言書の内容を4つの事項に分けて解説します。
相続に関する事項
・相続人の廃除、廃除の取り消し ・相続分の指定またはその委託 ・遺留分侵害額負担割合の指定 ・遺産分割方法の指定と分割の禁止 ・特別受益の持ち戻しの免除 ・相続人相互の担保責任の指定 ・祭祀主宰者の指定 |
「相続に関する事項」では、どの財産を誰にどのくらい相続するのかを指定することができます。
法定相続分とは異なる相続分割合で指定することも可能ですが、相続人の遺留分は侵害できません。
相続人が希望した場合は遺留分を請求できます。
遺留分を侵害した場合は、その部分の遺言が無効となります。
ただし、遺留分を無視したからといって、遺言書そのものが無効になることはありません。
※関連記事:遺産相続の遺留分とは?法定相続分との違いや割合・請求方法を解説
財産処分に関する事項
・遺贈 ・財団法人に向けた財団の拠出 ・信託の設定 |
「財産処分に関する事項」では、法定相続人以外の人や団体に相続する「遺贈」について定められています。
例えば、生前お世話になった人(長男の嫁など法定相続人でない人物)や、所属していた団体など法定相続人ではない特定の誰かに財産を引き継ぐことが可能です。
身分に関する事項
・婚姻外の子の認知 ・未成年後見人の指定 ・未成年後見監督人の指定 |
「身分に関する事項」では、婚姻関係にないパートナーとの子どもや、未成年の子どもを相続人として指定することや、第三者を後見人に指定することが出来ると定められています。
婚姻関係にない子どもは法定相続人にはなりませんが、遺言書で認知すると法定相続人として認められるようになります。
また、相続人に未成年者が含まれている場合、相続に必要な手続きをするための後見人の指定や、未成年相続人の遺産相続の管理を第三者に委ねることが可能です。
遺言の執行に関する事項
・遺言執行者の指定または指定の委託 |
「遺言の執行に関する事項」では、遺言書に書かれた内容を実行するために、必要な手続きを任せる遺言執行人を指定することができると定められています。
必要な手続きとは、「被相続人の預貯金口座の解約手続き」や、「不動産名義の変更」、「財産目録の作成」などです。
遺言執行人を決めておくことで、遺産相続がスムーズに進みます。
相続人や親族を指定することも可能ですが、トラブル防止のため弁護士や税理士など利害関係のない第三者に依頼することをおすすめします。
遺言書の効力にまつわる疑問
遺言書の法的効力について、よくある質問に回答します。
遺言書が複数ある場合はどうなる?
A.原則、日付が最新の遺言書が効力を持つ |
遺言書は何度でも書き直すことが可能です。
つまり、被相続人の死後、複数の遺言書が出てくる場合があります。
その場合、原則として日付の新しい遺言書に効力が認められます。
種類での優劣はありませんので、全ての遺言書の日付を確認しましょう。
日付の記載がない遺言書は、そもそも法的効力が認められません。
遺言書の効力はいつから発揮される?有効期間は?
A.亡くなった時から効力は発揮され、有効期限はない |
遺言書の効力は、遺言書を作成した人が亡くなった時から生じます。
そのため、遺言書で相続人として指定された人であっても、法定相続人でなければ亡くなるまで遺産相続に対する一切の権利が認められません。
また、遺言書には有効期限がありませんので、何十年も前に作成された古い遺言書であっても法的効力が認められます。
遺言書を勝手に開封してしまったらどうなる?
A.勝手に開封することは法律で禁止されているため罰金が科される |
遺言書を見つけても、勝手に開封するのは厳禁です。
遺言書は「家庭裁判所で相続人が立会いのもと開封しなければならない」と法律で定められているからです。
違反した場合は、5万円以下の罰金が科されます。
ただし、開封されていても効力には影響しません。
法的に有効な遺言書であれば、引き続き法的効力を発揮します。
まとめ
遺言書は、民法で厳格にルールが定められています。
このルールに従った遺言書でないと法的効力は認められません。
せっかくの遺言書が無効になってしまわないよう、作成時はしっかりとルールを確認することが大切です。
・自分の死後に備えて遺言書を作成したい方
・相続手続きに悩んでいる方
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