相続放棄の手続きはどこでやる?手続きの流れも解説!
相続放棄の手続きはどこで行えばよいのか分からず戸惑う方も多いでしょう。借金など不要な負債を背負わないためには、被相続人の死亡を知った日から三ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
本記事では、申述先の選び方、必要書類と費用、審査の流れ、期限管理のコツを段階的に解説し、初めてでも迷わず手続きを進めるポイントや途中で借金が発覚した場合の対応策まで紹介します。
相続放棄の手続きはどこでやるのか
相続放棄を行うには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で「相続放棄の申述」を申し立てます。
申述期間は、民法915条で“相続の開始を知った日から3か月以内”と明記され、1日でも過ぎると単純承認となり負債も承継する危険があります。
提出書類は、①相続放棄申述書②被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍③申述人の戸籍謄本④収入印紙800円⑤郵便切手(各裁判所指定額)です。申述書は窓口持参のほか郵送提出も可能で、遠隔地在住者は司法書士や弁護士を代理人に立てられます。
受付後に「照会書」が郵送されるので事実確認欄に署名押印し2週間以内に返送すると、概ね1か月で「相続放棄受理通知書」が交付されます。受理後は相続開始時から遡って相続人でなかった扱いとなり、金融機関や債権者への証明として通知書を提示できます。
調査が3か月内に終わらない場合は期間伸長を申し立てれば追加で猶予が得られます。管轄裁判所は裁判所サイトの郵便番号検索で確認できるため、事前調査を行うと手続きが円滑です。
相続放棄のメリット

相続放棄には多くのメリットがあります。これから解説するようなメリットが存在するため、心の負担を軽減し、スムーズな手続きを実現できます。
借金や負債を相続せずに済む
相続放棄の最大のメリットは、借金や負債を相続せずに済むことです。被相続人が残した財産の中には、思わぬ負債が含まれていることがあります。
特に、住宅ローンやクレジットカードの未払い、事業の借入金など、相続人が知らないうちに多額の負債を抱えるリスクがあるため、相続放棄は非常に重要な選択肢となります。
相続放棄を行うことで、相続人は被相続人の負債から解放され、経済的な負担を軽減することができます。これにより、相続人は自分自身の生活を守ることができ、将来的なトラブルを避けることが可能です。
特に、相続放棄の手続きを行う際には、被相続人の財産状況をしっかりと確認し、負債がある場合は早めに手続きを進めることが大切です。
また、相続放棄は、相続人が相続を放棄することを正式に家庭裁判所に申し立てることで成立します。この手続きは、被相続人の死亡を知った日から三ヶ月以内に行う必要があるため、期限を意識して行動することが求められます。
相続トラブルを回避できる
相続放棄を選択することで、相続に伴うトラブルを未然に防ぐことができます。特に、被相続人が多額の借金を抱えていた場合、相続人がその負債を引き継ぐことになり、経済的な負担が大きくなります。
相続放棄を行うことで、こうした負債を相続せずに済むため、トラブルの発生を防ぐことができるのです。
また、相続放棄をすることで、遺産分割協議が不要になる場合もあります。相続人同士の意見が対立しやすい遺産分割協議は、時に感情的な対立を引き起こし、長期化することもあります。
さらに、相続放棄をすることで、相続人が他の相続人との関係を良好に保つことができるというメリットもあります。
特に、相続に関するトラブルは、家族間の関係を悪化させる要因となることが多いですが、相続放棄を選択することで、そうしたリスクを軽減することが可能です。このように、相続放棄は単に負債を避けるだけでなく、家族の絆を守るためにも有効な手段と言えるでしょう。
遺産分割協議の手間を省ける
相続放棄を選択することで、遺産分割協議の手間を大幅に軽減することができます。通常、相続が発生すると、相続人同士で遺産の分配について話し合う必要があります。
このプロセスは、相続人の人数や遺産の内容によっては非常に複雑になり、時にはトラブルが発生することも少なくありません。しかし、相続放棄を行うことで、自身が相続人としての権利を放棄するため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
特に、被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄を選ぶことでその負担を回避できるだけでなく、相続人同士の意見の相違や争いを避けることができます。これにより、精神的な負担も軽減され、相続手続きがスムーズに進むことが期待できます。
また、相続放棄をすることで、遺産の内容に関する情報を深く掘り下げる必要がなくなるため、時間的なコストも削減できます。相続放棄を選択することは、特に負債が多い場合や、相続人同士の関係が複雑な場合において、賢明な選択肢となるでしょう。
相続放棄手続きの手順とは

相続放棄の手続きは、いくつかのステップを踏む必要があります。これから解説する流れを理解しておくことが重要です。
被相続人の財産調査をおこなう
相続放棄を行う前に、まずは被相続人の財産調査を行うことが重要です。この調査は、相続する財産と負債の全体像を把握するための第一歩となります。具体的には、被相続人が所有していた不動産、預貯金、株式、借金などの資産や負債を確認する必要があります。
財産調査を行う際には、まず被相続人の住民票や戸籍謄本を取得し、相続人の特定を行います。その後、金融機関や不動産登記所に問い合わせを行い、具体的な資産状況を把握します。
また、被相続人が借金を抱えていた場合、その内容も確認することが求められます。これにより、相続放棄を選択するかどうかの判断材料を得ることができます。
さらに、相続放棄を選択する場合、相続財産が負債を上回るかどうかも重要なポイントです。負債が多い場合は、相続放棄を選ぶことで、将来的な経済的負担を避けることができます。逆に、資産が多い場合は、相続を受けることも選択肢となりますので、慎重に判断することが求められます。
このように、被相続人の財産調査は相続放棄の手続きにおいて欠かせないステップです。しっかりと調査を行い、正確な情報をもとに次の手続きを進めることが、スムーズな相続放棄につながります。
手続きにかかる費用を準備する
相続放棄の手続きを進めるにあたり、必要な費用を事前に把握しておくことは非常に重要です。相続放棄の申述には、主に家庭裁判所に支払う手数料がかかります。この手数料は、申述書の提出時に必要となり、通常は数千円程度です。具体的には、収入印紙を購入して申述書に貼付する形で支払います。
また、場合によっては、弁護士に依頼することも考えられます。弁護士に依頼する場合は、相談料や手数料が別途発生しますので、事前に見積もりを取ることをおすすめします。弁護士に依頼することで、手続きがスムーズに進むことが期待できる一方で、費用がかさむ可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。
さらに、相続放棄の手続きに関連する書類の取得費用も考慮に入れるべきです。例えば、被相続人の戸籍謄本や住民票などの取得には、数百円から数千円の費用がかかります。これらの費用を合算すると、相続放棄の手続き全体にかかる費用は数万円程度になることもあります。
したがって、相続放棄を考えている方は、これらの費用を事前に準備し、計画的に手続きを進めることが重要です。費用の見積もりをしっかり行い、必要な資金を確保しておくことで、手続きがスムーズに進むでしょう。
手続きの必要書類を用意する
相続放棄の手続きを進めるためには、いくつかの必要書類を用意することが求められます。まず、最も重要な書類は「相続放棄申述書」です。
この書類には、相続放棄を希望する理由や被相続人の情報を記載する必要があります。申述書は家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードできるほか、直接裁判所で入手することも可能です。
次に、被相続人の死亡を証明するための「死亡診断書」や「戸籍謄本」も必要です。これらの書類は、被相続人が誰であるかを証明するために不可欠です。特に戸籍謄本は、被相続人の家族関係を明らかにするために必要となりますので、最新のものを用意しておくことが重要です。
さらに、相続放棄を行う際には、申述者自身の身分証明書も必要です。具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどの公的な身分証明書を用意しましょう。これにより、申述者が正当な権利を持つことを証明することができます。
最後に、必要に応じて「財産目録」も作成しておくと良いでしょう。これは、被相続人が所有していた財産や負債の状況を整理したもので、相続放棄の理由を明確にするために役立ちます。
家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
書類と費用がそろったら、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所へ申述書一式を提出します。熟慮期間三カ月を過ぎると放棄は原則不可になるため、郵送提出は配達証明付き書留で期限内必着にします。
また、窓口提出では受付印付き写しを控えに残すと到達証明となります。不備があれば補正命令が届くので期日内に修正し再提出しましょう。形式審査が整うと家事審判官が真意確認のため照会書送付や面接審問を行います。
さらに、面接が実施される場合は放棄理由や財産調査経過を説明できるメモを携帯すると安心です。弁護士を代理人に立てても裁判所から本人あてに書類が届くことがあるため、転居予定があれば郵便転送を忘れず手配してください。
海外在住で郵便を受け取れない場合は在外公館経由送達や受取代理人の選任が必要なため、早めに家事受付に相談し追加期間を見込んで準備することが重要です。
相続放棄が許可されると、相続放棄申述受理通知書が届き、正式に相続放棄が認められたことになります。これにより、借金や負債を相続することから解放されるのです。
家庭裁判所から照会書が届く
相続放棄の手続きが進む中で、家庭裁判所から照会書が届くことがあります。この照会書は、申述内容に関する確認や追加情報を求めるためのもので、通常は申述後数週間以内に送付されます。
照会書には、被相続人の財産状況や相続人の関係性についての質問が含まれていることが多く、正確な情報を提供することが求められます。
照会書が届いた際には、指定された期限内に必要な情報を提出することが重要です。期限を過ぎると、手続きが遅延したり、最悪の場合には相続放棄が認められない可能性もあります。
また、照会書に対する回答は、相続放棄の許可に大きく影響するため、慎重に対応する必要があります。もし不明点や疑問がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
相続放棄が許可されたら相続放棄申述受理通知書が届く
相続放棄の手続きが無事に進み、家庭裁判所から相続放棄が許可されると、申述受理通知書が届きます。この通知書は、相続放棄の手続きが正式に受理されたことを証明する重要な書類です。
受理通知書には、相続放棄が認められた日付や、被相続人の情報、申述者の情報が記載されています。この書類は、今後の手続きやトラブルを避けるためにも大切に保管しておく必要があります。
特に、相続放棄を行ったことを証明するために、他の相続人や金融機関に提示する場面が出てくるかもしれません。
また、相続放棄が許可された後も、被相続人の財産に関する情報を把握しておくことが重要です。万が一、後から新たな負債や財産が発覚した場合でも、相続放棄を行ったことで、あなたがその負債を背負うことはありません。
しかし、相続放棄の手続きが完了した後は、他の相続人との関係や、遺産分割協議に関しても注意が必要です。相続放棄を行ったことで、あなたの立場がどのように変わるのかを理解しておくことが、今後のトラブルを避けるための鍵となります。
相続放棄をする時の注意点

相続放棄を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これから解説する注意点を踏まえて、正しい方法で相続放棄を行いましょう。
生前に相続放棄はできない
相続放棄は、被相続人が亡くなった後に行う手続きであり、生前に行うことはできません。これは、相続放棄が相続の権利を放棄する行為であるため、被相続人が生存している間はその権利が発生しないからです。
相続放棄を行うためには、被相続人の死亡を知った日から三ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
生前に相続放棄を希望する場合、実際には遺言書を作成することが考えられます。遺言書において、特定の相続人に対して相続権を与えない旨を記載することで、相続放棄に近い効果を得ることができますが、これは法的な相続放棄とは異なります。
また、相続放棄を行う際には、相続財産の調査や必要書類の準備が求められます。これらの手続きをスムーズに進めるためにも、早めに行動を起こすことが大切です。相続放棄の手続きについての正しい理解を持ち、適切なタイミングで行動することが、後々のトラブルを避けるための鍵となります。
相続放棄前に遺産を処分すると相続放棄できない
相続放棄を考えている方にとって、遺産の処分は非常に重要なポイントです。相続放棄をする前に、被相続人の遺産を処分してしまうと、その後に相続放棄を行うことができなくなります。これは、相続放棄の手続きが、相続開始時点での財産や負債の状況を基に行われるためです。
具体的には、相続放棄をするためには、被相続人の財産や負債を正確に把握し、その上で家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
しかし、遺産を処分してしまうと、その財産が相続の対象から外れてしまい、相続放棄の手続きが無効となる可能性があります。例えば、遺産の一部を売却したり、贈与したりすると、その行為が相続放棄の意思を示すものとみなされ、手続きができなくなるのです。
したがって、相続放棄を検討している場合は、まずは遺産の調査を行い、必要な手続きを進めることが重要です。遺産を処分する前に、相続放棄の手続きをしっかりと理解し、適切な判断を下すことが求められます。
相続放棄すると撤回はできない
相続放棄を行う際には、その決定が非常に重要であることを理解しておく必要があります。一度相続放棄を申し立てると、その撤回は基本的にできません。これは、相続放棄が法律的に確定した行為であり、他の相続人や債権者に対しても影響を及ぼすためです。
相続放棄を選択する理由は様々ですが、特に借金や負債が多い場合には、相続放棄が有効な手段となります。しかし、放棄を決定する前に、慎重に考慮することが求められます。
例えば、相続放棄を行った後に、被相続人の財産に対する権利を失うことになりますので、将来的にその財産が価値を持つ可能性がある場合には、特に注意が必要です。
また、相続放棄を行う際には、他の相続人との関係や、遺産分割協議の進行状況も考慮する必要があります。相続放棄を選択した場合、他の相続人に対してもその意向を伝え、理解を得ることが重要です。
相続放棄しても受け取れるものがある
相続放棄を選択した場合でも、受け取れるものがいくつか存在します。まず、相続放棄を行うことで、被相続人の負債や借金を引き継がないことができますが、同時に遺産の一部を受け取る権利も保持することができます。
具体的には、被相続人が生前に贈与した財産や、相続放棄を行った後に発生した遺産については、受け取ることが可能です。
また、相続放棄をした場合でも、故人の遺族としての権利は残ります。たとえば、故人が加入していた生命保険の受取人が自分である場合、その保険金は相続放棄の影響を受けずに受け取ることができます。
さらに、相続放棄を行った後でも、相続人としての地位を持つため、他の相続人との関係や遺産分割協議においても一定の影響を及ぼすことがあります。したがって、相続放棄を検討する際には、受け取れるものやその条件についてしっかりと理解しておくことが重要です。
まとめ
相続放棄の手続きは、特に初めて経験する方にとっては複雑に感じることが多いですが、正しい知識を持って進めることでスムーズに行うことができます。相続放棄を選択することで、借金や負債を相続せずに済むだけでなく、相続トラブルを回避し、遺産分割協議の手間を省くことができます。
手続きの流れを理解し、必要な書類や費用を事前に準備することが重要です。また、家庭裁判所への申述は、被相続人の死亡を知った日から三ヶ月以内に行う必要があるため、期限管理にも注意が必要です。
相続放棄をする際には、生前に手続きを行うことができないことや、遺産を処分すると放棄ができなくなること、撤回ができないことなど、いくつかの注意点もあります。
最後に、相続放棄を選択することで受け取れるものもあるため、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。これらのポイントを押さえ、安心して相続放棄の手続きを進めていきましょう。