みなし相続財産とは?種類や相続時の注意点をどこよりも解説!
みなし相続財産とは、被相続人の死亡によって初めて取得が確定する生命保険金や死亡退職金など、民法上の遺産に含まれない一方で相続税の課税対象となる財産を指します。
本記事では相続遺産との違い、非課税限度額の計算方法、課税される贈与財産の判定基準、受取人が親族以外の場合に税率が加算される点など、申告で損をしないためのポイントを解説します。
みなし相続財産とは

みなし相続財産とは、被相続人の死亡を原因として初めて相続人に取得が確定する財産を指します。典型例は生命保険金、死亡退職金、死亡退職年金などです。
民法上の遺産には含まれないため遺産分割協議の対象外ですが、相続税法上は課税財産として計上すべき点が重要です。
申告漏れを防ぐには保険契約書や退職金規程を確認し、非課税枠の算定と納税資金の準備を早期に行う必要があります。
相続遺産との違いとは
相続遺産は被相続人が生前に所有していた現金、不動産、株式など既に存在する財産を指し、遺言や法定相続分に基づき遺産分割協議の対象となります。
一方、みなし相続財産は死亡によって初めて受取権が発生する生命保険金や死亡退職金などで、受取人が直接取得するため協議の対象外です。両者は課税計算上合算されるため、名義や発生時期によって処理を誤らないよう注意が必要です。
特に、みなし相続財産は非課税枠や二割加算の有無が申告額を左右するため、区別を正確に理解し財産目録を作成することが重要です。
みなし相続財産の種類とは

みなし相続財産には、主に生命保険金、死亡退職金、生前に受けた贈与財産、定期金を受け取る権利、債務免除益などがあります。これらは相続税の課税対象となる一方で、遺産分割の対象には含まれません。
生命保険金(死亡保険金)
生命保険金は契約で指定した受取人に直接支払われるため遺産分割協議の対象外ですが、相続税法上はみなし相続財産として課税されます。非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で超過部分が課税対象です。
また、受取人が親族以外の場合には税額が二割加算される点も留意が必要です。契約内容を更新する際は保険金額、受取人、支払方法を見直し、節税効果と家族間の公平性を確保することが重要です。
さらに、解約返戻金がある終身保険などは相続財産とみなされる部分もあるため、複数の保険契約を統合的に管理し税務リスクを最小化する計画が求められます。
死亡退職金
死亡退職金は会社の就業規則や退職金規程に基づき支給され、受取人が遺族に指定されている場合は直接支払われるため遺産分割協議の対象外です。相続税法ではみなし相続財産とされ、非課税限度額は生命保険金と同じ算式で算定されます。
また、勤続年数が長く支給額が高い場合には非課税枠を超える可能性が高いため、支給予定額と納税資金を事前に把握し資金繰りを計画することが重要です。
さらに、退職金共済や企業年金が併存するケースでは支給方法によって課税時期を分散できる場合があるため、人事部門へ確認し最適な受取形態を検討すると節税することができます。
生前に受けた贈与財産
死亡前3年以内に行われた生前贈与は相続開始時に相続財産へ加算され、贈与時に納付した贈与税額を控除したうえで相続税が再計算されます。暦年贈与を毎年行っている場合でも三年以内分は課税価格に組み込まれるため注意が必要です。
また、贈与契約書、振込伝票、評価証明などの証憑を保管し時価評価を正確に行うことで申告漏れを防げます。
そのため、教育資金一括贈与や住宅取得資金贈与の特例を利用している場合は特例残額や未使用枠の精算方法にも留意し、専門家に確認して最適な贈与スケジュールを設計してください。
定期金を受け取る権利
年金保険や確定給付年金などの定期金を受け取る権利は、被相続人の死亡時に一時金換算額を算出して課税されるみなし相続財産です。
受取人が複数いる場合は比例配分が必要となり、評価計算が複雑になるため保険会社や年金基金の残高証明を基に税理士へ相談することが望ましいです。
また、受取方法を年金形式から一時金形式へ変更すると課税タイミングが変化し納税資金の確保が容易になる場合があります。
さらに、遺産分割協議の対象外である点を家族に周知し資産配分の不公平感を抑制することも円滑な相続のために重要です。
債務免除益
債務免除益は被相続人の借入金や未払金が免除された際に発生する経済的利益で、相続税法上のみなし相続財産として課税されます。
親族が債務を肩代わりし免除した場合、市場取引でないため時価評価の妥当性が税務調査で検証されやすく適切な契約書と資金移動記録の保存が不可欠です。
また、債務免除が会社から行われたケースでは役員退職金とみなされる可能性もあり法人税との二重課税に注意してください。債務の利息分も免除対象に含まれるため残高証明を取得し元本と利息を区分して評価する必要があります。
生命保険金・死亡退職金の非課税限度枠とは
生命保険金と死亡退職金には相続税の非課税限度額が設けられ、いずれも「500万円×法定相続人の数」で算定します。
枠内に収まる金額は課税対象外ですが、相続放棄した人は人数計算に含まれず、親族以外の受取人は二割加算が適用されるため枠の実効性が低下します。限度額を有効に使うには受取人を複数の相続人に分散し保険金額を調整する方法が有効です。
死亡退職金については会社規程で支給額が変動するため、在職中に人事部門へ見込み額を照会し、不足分は終身保険などで補完すると納税資金を確保しやすくなります。家族や親族との会議で配分を共有し申告手続きの漏れを防ぎましょう。
みなし相続財産を相続する時の注意点

みなし相続財産を相続する際には、いくつかの重要な注意点があります。これから説明するポイントを理解しておくことで、相続手続きがスムーズに進むでしょう。
みなし相続財産は遺産分割の対象にならない
みなし相続財産は受取人固有の権利として支払われるため遺産分割協議書に計上する必要がなく受取人が単独で管理できます。その結果、他の相続人が同財産に権利を主張することはできません。
ただし、高額な保険金や退職金があると家族間の心理的格差が生じやすいので相続開始前から受取人設定と金額を共有し誤解や不信感を防ぐことが重要です。
万が一、契約内容を失念していると旧配偶者や未成年者が受取人になっている場合もあるため、定期的に保険証券や退職金規程を確認し受取人変更届を提出してください。
みなし相続財産は相続放棄しても受け取ることができる
相続放棄は民法上の相続分を放棄する手続であり、みなし相続財産の受取権には影響しません。そのため、負債の多い相続を放棄した相続人でも生命保険金や死亡退職金を受け取ることが可能です。
ただし、放棄者は法定相続人として扱われなくなるため非課税限度額の計算から除外され、課税対象額が増える点に注意が必要です。放棄前に受取予定額と税負担をシミュレーションし納税資金の調達や受取タイミングを考慮して判断することが望ましいです。
また、放棄手続きは家庭裁判所への申述が必要で期限も短いため、専門家へ相談しながら進めることで手続きミスを防ぎ円滑に保険金を受領できます。
相続放棄した相続人は非課税枠を適用できない
相続放棄により法定相続人でなくなった場合、その人は生命保険金や死亡退職金に設定された「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額の算定から除外されます。
放棄者自身が受取人であっても非課税枠を利用できず、保険金全額が課税対象となるため税負担が増大します。
また、放棄により家族全体の非課税枠が縮小し他の相続人の負担も高まる可能性があるため、放棄を検討する段階で受取予定額、納税資金、遺産全体のバランスをシミュレーションすることが不可欠です。
親族以外が受け取ると相続税が2割加算される
みなし相続財産の受取人が友人や法人など親族以外の場合、相続税法第18条の3により計算税額に20%が上乗せされます。これは血縁関係の薄い者への資産移転を抑制し課税公平を確保する制度です。
加算税を避けるには受取人を配偶者や子などの法定相続人へ変更し、保険金額を複数名に分散する方法が有効です。やむを得ず非親族へ渡す場合は税負担を見越して保険金額を減額するか受取人が納税準備資金を確保する必要があります。
遺留分の対象にはならない
遺留分は法定相続人が最低限取得できる割合を保障する制度ですが、みなし相続財産は民法上の遺産に含まれないため遺留分の算定から除外されます。そのため、死亡保険金や死亡退職金が多額であっても他の相続人は遺留分侵害額請求を行えません。
この特殊性を理解せずに遺言や資産配分を決めると遺産がわずかで保険金が突出する構成になり、残された相続人の感情的反発を招く恐れがあります。
さらに、公正証書遺言で保険金以外の資産配分を明確にし、家族信託を利用して資金を分散する方法も検討すると安心です。
まとめ
みなし相続財産は、相続税の課税対象となる重要な財産であり、相続遺産とは異なる特性を持っています。生命保険金や死亡退職金など、被相続人の死亡によって初めて取得が確定するこれらの財産について理解を深めることは、相続手続きにおいて非常に重要です。
相続時の注意点を把握し、適切に対処することで、税負担を軽減し、スムーズな相続を実現することができます。相続に関する知識をしっかりと身につけ、安心して相続手続きを進めましょう。