相続に関する相談ができる場所は?特徴と依頼にかかる費用相場を解説
当記事では、遺産相続の相談窓口について、それぞれの得意分野や費用相場について解説しています。相談先を探す時の注意点についても紹介しているので、相続相談について困っている方は、ぜひ参考にしてください。
相続手続きは、決められた期限内に不備なく必要書類を集めなければいけません。親族間のトラブルに発展する可能性があるため、慎重な対応が求められます。
突然相続が発生し、遺産相続について相談先を探している方も多いのではないでしょうか。
当記事では、遺産相続の相談窓口について、それぞれの得意分野や費用相場を解説しています。相談先を探す時の注意点についても紹介しているので、相続相談について困っている方はぜひ参考にしてください。
【この記事はこんな方におすすめです】 ・遺産相続の相談先を探している方 ・親族が亡くなられた方 ・相続相談をする時に必要な費用を知りたい方 |
1. 相続に関する相談ができる場所と特徴
「相続」とは、人が亡くなった時に、その人が所有していた財産を特定の人に引き継ぐことです。亡くなった人のことを「被相続人」、財産を引き継ぐ人のことを「相続人」といいます。
相続の対象となる遺産には、下記をはじめ金銭で見積もることのできるものが全て含まれます。
- 現金や預貯金
- 有価証券
- 車や貴金属などの動産
- 土地や建物などの不動産
- 特許権・著作権などの権利
- 借入金の債務
- 生命保険金や損害保険金などのみなし相続財産
誰が何を相続するのかは、3つの決め方があります。
遺言による相続 | 被相続人が遺言書に記した内容で相続すること |
法定相続 | 民法に沿って相続すること |
分割協議による相続 | 相続人全員の協議によって相続すること |
遺言書がある場合は、原則、遺言書の記載通りに相続します。遺言書がない場合は、民法で定められた人がルール通りに相続します。また、相続人全員の協議によって相続を決定する場合があり、それを分割協議による相続といいます。
相続開始を知ってから3か月以内であれば、相続放棄も可能です。
相続人同士でトラブルになる可能性もあるため、手続きは慎重に進めましょう。相続について相談したい場合は、いくつかの相談窓口があります。ここでは、7つの相談窓口とそれぞれの得意分野について紹介します。
1−1. 区役所の窓口
区役所に相談する時の注意点 ・専門家への相談は事前予約制(平日のみ) ・1回30分程度の時間制限がある ・対応してくれた相談員に直接依頼することができない ・相談できるのは一般的な内容のみ(個別の具体的なアドバイスは受けられない) |
市役所や区役所では、無料で相続相談ができます。自治体によって設置されている相談窓口や対応してくれる専門家が異なるため、事前にWEBサイトで自分の悩みに合う適切な窓口を探しましょう。弁護士や税理士に無料で相談できる「無料相談会」が開催されることもあります。
ただし、相談できる内容は一般的な内容にとどまっており、個別の具体的なアドバイスや作成した書類のチェックは受け付けられません。1回あたり30分程度に決められており、相談回数も年1~2回と制限が設けられていることが多いです。時間を無駄にしないよう事前準備をしてから相談に行きましょう。対応してくれた相談員に直接依頼することはできません。
具体的な相談ではなく、相続の全体の概要や相続手続きの概略を知りたい時に適しているのが、市区役所の窓口です。
1−2. 銀行
銀行に相談する時の注意点 ・銀行員は相続に関する専門資格を有していない ・銀行が相談に乗ってくれるのではなく、連携している専門家を紹介してくれる ・相続資産の運用について営業をかけられる ・銀行によって取り扱っている金融商品が異なる |
銀行には、相続に関する相談窓口が設けられています。ただし、銀行員は弁護士や税理士などの専門資格は有しておりませんので、専門的な内容には答えられません。どのようなことに困っているのかをヒアリングした上で、必要に応じて銀行が連携している専門家を紹介してくれる仕組みになっています。
適した専門家を紹介してくれるので、自分で探す手間が省けることが銀行に相談するメリットです。相続した場合の資産運用について教えてくれるので、相続資産の運用を検討している方は銀行がおすすめです。
ただし、相続財産の運用に関して営業をかけられることが多いため、注意が必要です。銀行で相続資産を運用したい場合は、その銀行が取り扱っている金融商品について事前に調べておきましょう。
1−3. 税務署・国税局
税務署で相談できる内容 ・相続税や贈与税などの税額計算 ・申告書の作り方 ・申告書に添付する書類 ・相続財産の評価方法や路線価 ・優遇税制の適用要件 税務署では相談できない内容 ・固定資産税や住民税などの地方税 ・節税に関する相談 |
相続税や贈与税に関する相談は、税務署や国税局でも受け付けています。税務署は、電話相談だけでなく、対面での相談にも応じてくれます。
相談できる内容は、国税に関することに限られており、公的機関のため節税について踏み込んで相談することは出来ません。税制優遇制度に関する質問には応じてもらえるので、税金に関して困っていることがある場合は、まず税務署に相談してみるのがおすすめです。
1−4. 弁護士
弁護士への相談が適しているケース ・相続手続きを代わりに任せたい ・遺産分割の内容に納得がいかない ・相続人同士が不仲で話し合いができない ・法定相続分を超える相続を希望する相続人がいる ・遺言書の無効を主張する相続人がいる ・遺留分の請求をしている相続人がいる |
裁判の代理人ができるのは弁護士のみなので、相続トラブルが発生している場合は弁護士に相談しましょう。弁護士は、他の専門家に比べて対応できる範囲が広く、下記を含め相続に関する相談に幅広く対応してくれます。
- 相続争いの仲介や代理交渉
- 遺言書の検認の申し立て
- 裁判手続き
- 法定相続人調査
- 相続財産調査
- 相続放棄の申し立て
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金の解約払い戻し
- 有価証券や不動産の名義変更
1−5. 司法書士
司法書士への相談が適しているケース ・不動産の登記手続きが必要 ・商業登記を変更する ・相続トラブルは発生していない ・相続手続きの大部分を相談したい |
司法書士は、登記手続きの専門家です。相続に伴い不動産の登記手続きが必要な不動産が多い場合は、司法書士に相談しましょう。相続登記だけでなく、商業登記の変更も可能です。
弁護士同様、相続において幅広い相談に応じてくれますが、弁護士との違いが2つあります。
- 代理人にはなれないので相続トラブルには対応できない
- 相続登記ができる
不動産登記が必要で相続トラブルが発生していない場合は、司法書士への相談がおすすめです。
1−6. 税理士
税理士への相談が適しているケース ・相続する相続財産の正確な価値が分からない ・相続額が相続税の基礎控除額を上回っている ・生前に相続対策について相談したい |
税理士は、財産を調査し相続税額の計算や申告を行ってくれます。相続人に代わって納税額を計算したり、節税のアドバイスができるのは、税理士だけです。
相続財産額が基礎控除額【3000万円+600万円×法定相続人の数】を上回っている場合、相続発生から10か月以内に相続税申告が必要です。期限を過ぎるとペナルティが科されるため、専門家である税理士に相談するのが安心です。
1−7. 行政書士
行政書士への相談が適しているケース ・相続に関する書類の作成を任せたい ・相続人や相続財産の調査をして欲しい ・相続トラブルがなく円満に相続できそう ・不動産登記の必要がない |
行政書士は、書類作成などの事務的な手続きを行ってくれます。遺産分割協議書や財産目録、国や市区町村に提出する書類の作成をはじめ、相続人や相続財産の調査も依頼可能です。
他の専門家と比べると依頼できる業務は限定的ですが、相続争いがなく、不動産登記も必要ない場合は、行政書士への相談がおすすめです。
2. 相続の相談や依頼にかかる費用相場
相続の手続きにおいて、必ず必要となる費用は下記の通りです。
戸籍謄本(全部事項証明書) | 1通450円 |
戸籍抄本(個人事項証明書) | 1通450円 |
除籍謄本 | 1通750円 |
改製原戸籍 | 1通750円 |
戸籍の附票 | 1通300円~350円 ※市区町村により異なります |
住民票除票 | 1通300円~400円 ※市区町村により異なります |
住民票の写し | 1通300円~400円 ※市区町村により異なります |
印鑑登録証明書 | 1通300円 ※市区町村により異なります |
専門家に相談する場合は、別途相談料や手数料が発生します。費用は相談する場所や人によって異なりますので、それぞれの費用相場を解説します。
2−1. 市役所・区役所の窓口
市役所や区役所への相続相談は、基本的に無料です。
ただし、事前予約が必要で、1回あたりの相談時間や相談階数には制限を設けている場合があるので注意が必要です。具体的なアドバイスや書類作成はできないため、一般的な内容のみの対応となります。相続の全体の概要や手続きについて知りたい時に適しています。
2−2. 銀行
被相続人の預金口座の凍結や、相続手続きに関する相談のみであれば、基本的に相談料は無料です。ただし、遺言信託などの遺産整理業務を依頼する場合の費用相場は、100万円以上です。
銀行員は専門知識を有していないため、連携している専門家を紹介してくれますが、仲介手数料が含まれるため、弁護士などに直接依頼するより高額になります。
2−3. 税務署・国税局
相続税や贈与税など相続に関する税金の相談は、税務署や国税局が無料で受け付けています。
相談できる内容は国税に関することに限られていますが、税理士に相談するほどの内容ではないが税金に関して困っていることがある場合は、税務署や国税局に一度相談してみるのがおすすめです。
2−4. 弁護士
相談料 | 5,000円/30分 |
着手金 | 20万円~30万円 |
報酬金 | 相続額に応じて計算 |
その他 | 実費 |
弁護士への相談は、事務所によって金額が大きく異なります。上記は一般的な相場として参考にしてください。
相談料は、弁護士に相談する時間に対して発生する費用です。30分で5,000円から1万円が相場ですが、初回無料で相談に乗ってくれる事務所も増えています。
着手金は、依頼に着手した時点で支払う費用です。20~30万円程度が一般的ですが、相続財産の額に応じて変動するため大幅に上回るケースもあります。
報酬金は、依頼内容を完了した時点で発生する費用です。弁護士に依頼したことで得られた相続金額に応じて計算されるのが一般的です。
その他、書類取得にかかった費用や郵便切手代、印紙代など実際にかかる費用が実費で発生します。遠方の裁判所で調停を行う場合など、出張が発生する場合は5万円~10万円程度の費用が発生します。
2−5. 司法書士
司法書士に相続登記のみ依頼した場合は、手続き費用として1件あたり5~10万円が相場です。相続手続きを丸ごと依頼する場合は、10万円以上かかる場合があります。
不動産の数によって費用は大きく変動しますが、不動産の相続登記は司法書士と弁護士のみ対応できます。弁護士は、登記業務を取り扱っていない場合が多いので、登記手続きが必要な場合は司法書士に依頼しましょう。
2−6. 税理士
税理士に依頼した場合の費用は、遺産総額の0.5%~1.0%が相場です。例えば、遺産総額が5,000万円だった場合、25万円~50万円の費用が発生します。
遺産総額が大きくなるほど相続財産の調査や税額計算が複雑になるため、遺産総額に応じて料金を設定している事務所が多いです。
2−7. 行政書士
相続人調査 | 5万円程度 |
相続財産調査 | 5万円程度 |
遺産分割協議書の作成 | 3万円~ |
預貯金や株式の相続手続き | 3万円程度 |
自動車の相続手続き | 3万円程度 |
行政書士は、公的な書類を作成する専門家であるため、依頼できる業務は他の専門家に比べて限定的です。そのため、費用も他の士業より安い傾向があります。最低金額が10万円に設定されている場合があるため注意が必要です。
必要な書類作成のみサポートを受けたい場合は、行政書士への相談がおすすめです。
3. 相続を自分でした場合の費用
相続手続きを自分で行う場合、必要書類の取得費用のみなので約3,000円ほどで手続きできます。不動産や車を相続する場合は、登録免許税や自動車取得税などの費用が別途発生します。
ただし、自分で相続手続きを行うためには、かなりの時間と労力が必要です。途中で断念してしまうこともあるので、下記のように複雑な手続きが発生する場合は専門家に依頼することをおすすめします。
- 兄弟姉妹の相続や代襲相続が発生する場合
- 相続人同士の仲が悪い場合
- 遺産に不動産が含まれる場合
- 代償分割や換価分割を利用する場合
- 相続財産の総額が高額になる場合
- マイナス資産がある場合
- 相続資産を把握できていない場合
一方で、相続資産が明確で、相続人が配偶者と子どもだけの場合は、自分で手続きをすることも難しくはないでしょう。時間に余裕があり、根気強く手続きを進められるのであれば、自分で手続き進めることも可能です。
3−1. 相続を親族に依頼する場合の費用
相続手続きは、親族に依頼することができます。報酬の支払いは当事者同士で決定するため、報酬がない場合もあれば謝礼を渡す場合もあります。トラブル回避のためお互いが納得できる金額を予め決めておくことが大切です。
また、報酬を支払わない場合であっても、書類取得費用など手続きに必要な費用は委任した人が負担するのが一般的です。
4. 相続放棄をする場合にかかる費用
相続放棄とは、相続の対象となる資産や負債を一切引き継がずに放棄することです。相続の対象となる遺産には、現預金や不動産などの資産だけでなく、借金や保証債務などのマイナス資産も含まれます。マイナス資産が大きい場合や遺産分割協議に参加したくない場合には相続放棄を選択することがあります。
自分で手続きをすることも出来ますし、専門家に依頼することも可能です。それぞれの費用は下記の通りです。
収入印紙 | 800円 |
被相続人の住民票除票または戸籍附票 | 300円程度 ※市区町村によって異なる |
戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本 | 750円 |
郵便切手 | 500円前後 |
司法書士に依頼する場合の費用 | 約3万円 |
弁護士に依頼する場合の費用 | 約5万円 |
自分で手続きをするなら3,000円程度ですが、専門家に依頼すると数万円の費用が発生します。書類に不備があると相続放棄が承認されないため、専門家に依頼した方が確実です。
5. 相続の相談先を探す時の注意点
相続は、親族間のトラブルを招く可能性があるため、できるだけ円満かつ円滑に進めたいところです。ここでは、専門家に相続について相談する場合の注意点をご紹介します。
5−1. 目的によって使い分ける
・相続について全体の概要や相続手続きの概略を知りたい:区役所 ・相続財産の運用について相談したい:銀行 ・詳しい専門家を紹介して欲しい:銀行 ・相続税や贈与税について概要を知りたい:税務署 ・相続トラブルが発生している:弁護士 ・不動産の相続登記や商業登記が必要:司法書士 ・相続税の基礎控除を超える相続財産がある:税理士 ・相続税の対策や節税方法を知りたい:税理士 ・書類の代行のみ依頼したい:行政書士 |
行政機関や銀行、各専門家など様々な相談先がありますが、それぞれ対応できることが異なりますので、目的によって相談相手を選ぶ必要があります。上記を参考に自分に合った相談窓口を活用しましょう。
5−2. 解決実績を確認する
弁護士などの専門家に相談する場合は、得意分野や過去の解決実績を確認し、信頼できる人に相談しましょう。相続相談案件に力を入れている事務所であること、担当者との相性が良いことも重要です。
相談先を決める際は、複数の事務所に話を聞きに行き、費用や人柄を比較しながら決定するのがおすすめです。
6. まとめ
相続手続きは、自分で進めることも不可能ではありませんが、かなりの時間と労力を要します。親族間のトラブルを招く可能性もあるため、スムーズに相続を進めるためには専門家に相談することをおすすめします。
様々な相談窓口があるため、目的に合った実績の豊富な専門家を見つけることが大切です。
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