寄与分とは?認められる5つの型や請求手順について解説!
寄与分は、相続人のうち被相続人の事業手伝いや療養看護などで財産の維持・増加に特別な貢献をした人が、その功労に見合う取り分を法定相続分に上乗せできる制度です。
本記事では事業従事・金銭出資・療養看護など五つの典型型を例示し、証拠収集の方法、協議・調停・審判へ進む手順、寄与分と特別受益が重なる場合の調整ルールを解説します。
寄与分とは

寄与分とは、相続人が被相続人の財産形成や維持に対し通常の扶養義務を超えた特別の貢献をした場合、その貢献度を金銭評価し法定相続分に加算できる制度です。
事業手伝いによる売上向上、療養看護による医療費節減、資金出資による資産増など多様な行為が対象となります。算定は遺産総額に寄与割合を掛けて行い、他の相続人の取り分を減額調整して公平性を図ります。
寄与分の対象者とは
寄与分の対象者は被相続人の法定相続人のうち、財産の維持または増加に特別の寄与をした者です。典型例は家業に無報酬で長年従事した子、店舗拡大資金を提供した配偶者、要介護状態を献身的に看護した長女などです。
単なる同居や家事手伝いと区別し、寄与行為が「特別」かどうかは労力の質量・無償性・継続性・経済効果で判断されます。寄与が認定されれば、その価額を金銭に換算し法定相続分に上乗せして取得できます。
寄与分が認められる5つの型とは

寄与分は、相続人が被相続人に対して特別な貢献をした場合に認められる制度ですが、その具体的な型は多岐にわたります。ここでは、寄与分が認められる代表的な5つの型について解説します。
事業従事型
事業従事型寄与分は、相続人が被相続人の営む会社や農業・商店などに無報酬または低賃金で長期間従事し、労務提供によって事業収益や資産価値を増加させた場合に認められます。
また、評価は通常支払われるべき賃金相当額や営業利益増加額を基礎に算定し、寄与期間と役割の重要度を加味して決定します。
さらに、請求には勤務実態を示す帳簿、取引先の証言、税務申告書などの証拠が必要で、寄与内容が家族手伝いを超えていることを示す必要があります。家業継続の功績を正当に評価してもらうため、報酬水準データを準備し交渉に備えると円滑です。
金銭等出資型
金銭等出資型寄与分は、相続人が被相続人の事業や生活のため多額の現金、不動産、株式等を無償・無利息で提供し、資産が増加した場合に適用されます。計算は出資額に合理的利息や賃料相当額を加え遺産評価時点の増加分を算出するのが一般的です。
また、請求時には振込記録、契約書、念書などを整備し、贈与や貸付ではなく寄与である点を説明する必要があります。
家族間の金銭移動は曖昧になりがちなので、出資当初から領収書と資金使途メモを残すことが紛争予防に直結します。専門家評価書を付けると説得力が高まります。
療養看護型
療養看護型寄与分は、相続人が長期にわたり被相続人の介護・看護を行い、外部介護費用を抑制したことで財産維持に寄与した場合に認定されます。評価基準は外注したと仮定した際の費用節減額や医療費補填額で、寄与期間や夜間帯ケアの有無で変動します。
また、請求には介護日誌、医療領収書、訪問看護計画書などが有効で、同居扶養との差を明確化することが必須です。公的給付控除を含む正確な計算には専門知識が必要なので、早期に証拠を整理し相談窓口を活用しましょう。
扶養型
扶養型寄与分は、相続人が被相続人の生活費や住居費を長期間負担し財産減少を防いだ場合に認められます。評価は支出額から被相続人自己負担分を差し引いた純援助額を基礎とし、物価変動を加味して現在価値に換算します。
扶養型の場合は、領収書、世帯収支表、振込明細が証拠として重視されます。扶養は当然とみなされがちですが、範囲を超えた負担を可視化することで寄与分が成立します。
財産管理型
財産管理型寄与分は、相続人が不動産賃貸管理や金融資産運用、税務対応を担い資産価値を維持・増加させた場合に評価されます。空室対策で賃料収入を増やした、運用益を高めた、節税で納税額を削減した事例が該当します。
また、算定には管理報酬相当額や増益分・節税額を基礎とし、作業時間と専門性で補正します。管理委託契約書、決算書、税申告控などが証明書となります。
寄与分の請求手順とは

寄与分を請求するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。これから説明する手続きは、寄与分を適切に請求するために重要なステップです。
遺産分割協議
遺産分割協議は相続人全員が参加し遺産配分を決定する最初のステップで、寄与分主張も原則ここで行います。寄与者は功績を裏付ける書類を共有し、加算後の具体的請求額を提示して説得します。
また、議事録を作成し、署名押印すれば合意内容は私的契約として効力を持ち、登記や金融手続きにも利用できます。長期化すると感情対立が深まるため、税理士や司法書士を招くと円滑です。
さらに、協議が円滑に進むよう、事前に話し合いのポイントを整理しておくことが重要です。もし協議がまとまらない場合は、調停や審判に進むことも選択肢として考えられます。
遺産分割調停・寄与分を定める処分調停
遺産分割調停は協議不調時に家庭裁判所で行い、寄与分を定める処分調停も同時に申立てることが可能です。調停委員が事実関係を整理し寄与額について調整します。
寄与者は証拠や専門家鑑定を提出でき、調停成立なら調停調書が判決と同一効力を持ち即日執行可能です。成立しない場合は審判へ移行し裁判官が終局的に認定します。
調停では、相続人全員が参加し、寄与分の内容やその評価について話し合います。必要に応じて、証拠資料を提出し、専門家の意見を参考にすることもあります。調停が成立すれば、合意内容が調停調書として記録され、法的効力を持つことになります。
遺産分割審判
遺産分割審判は調停不成立時に裁判所が職権で分配方法を決定します。裁判官は証拠と鑑定結果を基に寄与分を算定し審判書で明示します。
不服があれば2週間以内に即時抗告できますが事実認定は覆りにくく、一次審で主張を尽くすことが肝要です。審判確定後は登記や金融手続きに利用でき強制力も備えます。
また、形式は厳格で証人尋問が必要な場合もあるため弁護士関与が実務上不可欠で、協議・調停段階での解決が望ましいです。
寄与分に関する注意点とは

寄与分を請求する際には、いくつかの重要な注意点があります。これから解説する注意点を踏まえ、正しい知識を身につけておきましょう。
寄与分に対して、遺留分侵害額請求はできない
寄与分は特別の貢献を補正する制度、遺留分は最低保障を確保する制度で目的が異なります。よって寄与分に遺留分侵害額請求は認められません。
また、寄与分が認定され他相続人の取得分が遺留分を下回っても減殺請求の対象外です。遺留分権利者は寄与分控除後の残余財産を基礎に自己の遺留分を計算し直します。
つまり、寄与分は相続人の貢献に基づくものであり、遺留分とは別の概念であるため、注意が必要です。相続人間での公平な分配を図るためにも、寄与分の理解を深めることが重要です。
寄与者と特別受益者が同じ場合、原則差し引き計算される
寄与者が特別受益者でもある場合、寄与分額から特別受益額を差し引く相殺計算が行われます。同一人物が利益を先取りしている点を調整し過大取得を防ぐためです。
差引後も寄与分が残るときのみ法定相続分に加算されます。例として開業資金1000万円を贈与された子が寄与分1200万円を認められた場合、上乗せ額は差額200万円となります。
計算過程の争いを防ぐため贈与契約書や評価明細で透明性を確保し、早期開示でトラブルを回避しましょう。
遺言書では寄与分を定めることができない
寄与分は、相続人が被相続人に対して特別な貢献をした場合に、その貢献に見合った取り分を法定相続分に上乗せする制度ですが、遺言書において寄与分を明示的に定めることはできません。
これは、寄与分が相続人間の公平性を保つための制度であり、遺言書によって一方的に変更されることを防ぐための措置とされています。
したがって、寄与分の請求は遺言書の内容に関わらず、相続人同士の協議や調停を通じて行われる必要があります。勘違いする人が多いポイントなので、しっかり覚えておきましょう。
寄与分の請求には10年の時効がある
寄与分の請求には、重要な事項が存在します。それは、寄与分を請求する権利が発生してから10年以内に行使しなければならないというものです。
この時効は、被相続人の死亡時から起算されます。つまり、相続人が寄与分を主張するためには、相続開始から10年以内に請求手続きを行う必要があります。
この時効の存在は、相続人にとって非常に重要です。なぜなら、寄与分の請求を怠ると、権利を失ってしまう可能性があるからです。したがって、寄与分に関する事実や証拠を早めに整理し、必要な手続きを進めることが求められます。
まとめ
寄与分は、相続において特別な貢献をした相続人がその功績に見合った取り分を得るための重要な制度です。事業従事や金銭出資、療養看護など、さまざまな型が存在し、それぞれの状況に応じた請求手順が求められます。
寄与分を正しく理解し、適切に請求することで、相続人間の公平な分配が実現できるでしょう。今後の相続に備え、寄与分についての知識を深めておくことが大切です。