家族信託で不動産を相続するメリットとは?手続きの流れも解説!
不動産を家族信託すると、共有名義解消や認知症対策を図りつつ、受益権の設定で二代先の相続先まで指定できます。一方、信託登記や契約コスト、長期拘束などデメリットも存在します。
本記事では不動産信託のメリット・デメリットと手続きフロー、税務・登記の注意点、賃貸運用や売却時のポイントを実例を交えて詳しく解説します。
家族信託で不動産を相続するメリット

家族信託を利用することで、不動産に関する相続トラブルを回避しやすくなります。これから解説するメリットにより、家族信託は不動産相続の新たな選択肢として注目されています。
不動産における相続トラブルを回避しやすい
家族信託を利用することで、不動産に関する相続トラブルを未然に防ぐことが可能です。一般的な相続では、遺言書の有無や相続人間の意見の相違から争いが生じることがあります。
しかし、家族信託を活用することで、信託契約に基づいて受益者を明確に指定できるため、相続人間の不安や誤解を軽減できます。
また、信託契約により、財産の管理や運用方法を事前に決めておくことができるため、相続発生後の混乱を避けることができます。
信託契約後も不動産投資・運用ができる
家族信託を利用することで、不動産の所有権を信託に移転した後も、受託者はその不動産を活用し続けることが可能です。具体的には、賃貸物件として運用したり、リフォームを行って価値を高めたりすることができます。
これにより、受益者は安定した収入を得ることができ、資産の維持・増加を図ることができます。また、信託契約においては、受益者の意向に沿った運用方針を設定することができるため、柔軟な対応が可能です。
二代先の財産先を指定できる
家族信託の大きなメリットの一つは、受益権の設定を通じて二代先の相続先を指定できる点です。通常の相続では、財産は直系の親族に引き継がれますが、家族信託を利用することで、特定の受益者を選定し、将来的な相続を計画的に行うことが可能になります。
これにより、例えば、子どもが相続した後にその子どもに財産を引き継ぐことができ、家族の資産を守る手段として非常に有効です。
また、受益者の指定により、相続トラブルを未然に防ぐことができるため、安心して不動産を次世代に引き継ぐことができます。
家族信託で不動産を相続するデメリット

家族信託には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。しっかりデメリットも理解した上で家族信託で不動産を相続するか決めましょう。
信託登記・所有権移転登記など手続きが手間になる
家族信託を利用する際には、信託登記や所有権移転登記といった手続きが必要になります。これらの手続きは専門的な知識を要するため、一般の方にとっては煩雑に感じることが多いです。
特に、信託契約を結ぶ際には公正証書を作成し、信託財産の名義変更を行う必要があります。この過程で、書類の準備や役所への申請が求められ、時間と労力がかかることがデメリットとして挙げられます。
また、手続きの不備があると、後々のトラブルの原因にもなりかねません。したがって、信託を考える際には、これらの手続きに対する理解と準備が不可欠です。
契約コストがかかる
家族信託を利用する際には、契約コストが発生することを理解しておく必要があります。具体的には、信託契約書の作成や公証人による認証、さらには信託登記にかかる手数料などが含まれます。
これらの費用は、信託の内容や不動産の種類によって異なるため、事前にしっかりと見積もりを行うことが重要です。
また、専門家に依頼する場合は、その報酬も考慮する必要があります。これらのコストは一時的な負担となりますが、長期的には相続トラブルを回避するための投資とも言えるでしょう。
家族信託の関係者が長期間拘束される
家族信託を利用する際のデメリットの一つに、関係者が長期間拘束されるという点があります。信託契約を結ぶと、受託者は信託財産の管理や運用を行う義務を負います。
このため、受託者は信託の内容に従って行動しなければならず、自由な判断が制限されることがあります。
また、信託の期間が長期にわたる場合、受託者や受益者がその間に生活環境や状況が変わることも考えられます。こうした拘束は、特に高齢者や健康上の問題を抱える方にとっては負担となることがあります。
節税効果は期待できない
家族信託を利用する際の注意点の一つは、節税効果が期待できないということです。一般的に、家族信託を通じて不動産を管理する場合、信託財産に対する課税は依然として発生します。
例えば、信託財産から得られる収益に対しては所得税が課せられ、相続時にも相続税が適用されるため、税負担が軽減されるわけではありません。
また、信託契約を結んだとしても、税務上の取り扱いは通常の不動産所有と変わらないため、節税対策としての効果は薄いと言えます。
不動産を家族信託するときの流れ

不動産を家族信託する際の流れは、いくつかの手順を踏む必要があります。これらのステップを踏むことで、スムーズに不動産の家族信託を実現できます。
家族・親族間で話し合って家族信託の内容を決める
家族信託を利用する際、まず重要なのは家族や親族間でしっかりと話し合いを行うことです。このプロセスでは、信託の目的や内容、受益者の選定、信託財産の管理方法などを明確にする必要があります。
特に、受益者が誰になるのか、どのように財産を分配するのかを事前に合意しておくことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
また、家族全員が納得する形で信託の内容を決定することで、信託契約後の運用もスムーズに進められます。
公正証書としての信託契約書を作成する
家族信託を行う際には、公正証書として信託契約書を作成することが重要です。この契約書は、信託の内容や条件を明確に記載し、法的な効力を持たせるためのものです。
公正証書にすることで、後々のトラブルを避けることができ、信託の内容が第三者に対しても証明されやすくなります。
契約書には、信託の目的や受益者、信託財産の詳細、信託の管理方法などを具体的に記載します。また、公証人の立会いのもとで作成されるため、信頼性が高く、法的な手続きがスムーズに進むことが期待できます。
該当する不動産登記の名義変更を行う
家族信託を利用する際には、信託契約を結んだ後に該当する不動産の登記名義を変更する必要があります。この手続きは、信託の内容を正式に反映させるために重要です。
具体的には、信託契約書を基に、登記所に対して名義変更の申請を行います。必要な書類としては、信託契約書の原本や登記申請書、本人確認書類などが求められます。
名義変更が完了すると、信託された不動産は受託者の名義となり、受益者がその利益を享受できるようになります。このプロセスを経ることで、家族信託の目的が達成され、相続トラブルの回避や資産管理の効率化が図られます。
信託用の口座を開設する
家族信託を行う際には、信託用の口座を開設することが重要です。この口座は、信託財産の管理や運用を行うための専用のものであり、受益者への分配や不動産の収益を管理する役割を果たします。
信託用口座を設けることで、個人の資産と信託財産を明確に分けることができ、透明性のある管理が可能になります。
口座開設の手続きは、通常の銀行口座と似ていますが、信託契約書や受益者の情報を提示する必要があります。また、信託用口座は、信託の目的や内容に応じて適切な金融機関を選ぶことが大切です。
まとめ
家族信託を利用することで、不動産の相続に関するさまざまなメリットを享受できます。特に、相続トラブルの回避や、二代先の受益者を指定できる点は大きな魅力です。しかし、手続きの煩雑さやコスト、関係者の拘束といったデメリットも存在します。
これらを十分に理解し、家族での話し合いを重ねることで、より良い相続方法を選択することが重要です。信託を通じて、安心して未来を見据えた不動産運用を実現しましょう。