銀行で家族信託はできる?メリットやデメリット解説
銀行の家族信託専用口座を利用すれば、相続発生後も速やかな資金払い出しや受益者指定が行えます。ただし口座開設には取扱銀行の制限、開設費用、キャッシュカード利用不可などのデメリットもあります。
本記事では銀行信託の仕組みと利用メリット、注意点、銀行選びのチェックリストを詳しく解説し、手続きの流れも紹介します。
銀行で家族信託はできるのか

銀行での家族信託は可能ですが、すべての銀行がこのサービスを提供しているわけではありません。家族信託専用口座を開設することで、相続発生後の資金の払い出しや受益者の指定がスムーズに行えるメリットがあります。
しかし、取り扱い銀行の数が限られているため、選択肢が少ないことがデメリットとなることもあります。信託口座を利用する際は、各銀行の条件や手続きについて十分に確認することが重要です。
銀行の家族信託を利用するメリットとは

銀行の家族信託を利用することで得られるメリットは多岐にわたります。これから解説するメリットを活かすことで、家族信託はより効果的な相続対策となるでしょう。
相続発生後すぐに資金を引き出せる
被相続人名義の普通預金は死亡確認後に凍結され、遺産分割協議書が揃うまで払戻しができません。
一方、家族信託で信託口口座を開設していれば、死亡届と受益者確認のみで資金を払い出せるため、葬儀費用や医療費など急を要する支出に即応できます。
受益者が高齢で窓口に行けない場合でも代理人届で遠隔払い出しが可能な銀行もあり、介護費用の不足を回避できます。
さらに、信託財産は倒産隔離により銀行や受託者の債務と切り離されているため、破綻時でも資金が保全されます。
資金の受け取り方を選択できる
家族信託では、委託者が契約で受益者ごとの受取方法を詳細に指定できるため、生活設計や税負担に応じた柔軟な資金管理が可能となります。
一括払いで住宅ローン残債を清算し、残額を年金方式で受け取る複合パターンも設定でき、受益者は最適なタイミングで資金を受領できます。
銀行型の場合、定期振込に加え、医療費や学費など特定事由が生じた際のみ追加払いを行う「条件付き分配」も用意され、支出コントロールが容易です。
また、受益権割合を段階的に変更する設計を採用すれば、親の存命中は介護を担う子へ多く分配し、死亡後にきょうだいで均等化するなど公平調整も実現できます。
銀行が受託者として財産管理を行ってくれる
銀行が受託者となる家族信託では、専門部署が帳簿作成・財産目録の備付け・定期報告を行うため、委託者や受益者は複雑な会計実務から解放されます。金融商品や不動産の運用提案も同一窓口で受けられるため、資産分散とモニタリングを一体的に進められます。
信託財産は銀行固有財産と分別管理され、倒産隔離が保証されるほか、担当者が交代しても内部マニュアルで継続性が確保されます。
登記や税務申告が必要になった場合も提携専門家と連携しワンストップで処理でき、家族の手間と時間を大幅に削減できます。
また、定期報告書を電子交付する銀行も多く、遠隔地の相続人でもスマートフォンで資産状況を確認できるため、世代間の情報共有ツールとしても機能します。
銀行の家族信託を利用するデメリットとは

銀行で家族信託を利用する際には、いくつかのデメリットも存在します。これから解説するデメリットを理解した上で、家族信託を検討することが重要です。
信託口口座を取り扱っている銀行が少ない
銀行で家族信託を利用する際の大きなデメリットの一つは、信託口口座を取り扱っている銀行が非常に限られていることです。
多くの銀行は一般的な預金口座や投資信託を提供していますが、家族信託専用の口座は特定の金融機関にしか設けられていません。このため、利用者は選択肢が狭まり、希望する銀行での口座開設が難しい場合があります。
また、取り扱いのある銀行でも、地域によってはサービスが提供されていないこともあるため、事前に調査が必要です。信託口口座を開設する際は、取り扱い銀行の情報をしっかりと確認し、自分のニーズに合った選択をすることが重要です。
開設までに費用や手間がかかる
銀行で家族信託を利用する際のデメリットの一つは、口座開設にかかる費用や手間です。一般的に、家族信託専用口座を開設するためには、通常の口座開設よりも多くの書類や手続きが必要となります。
具体的には、信託契約書や受益者の情報、財産の詳細などを提出しなければならず、これが手間となることがあります。また、銀行によっては口座開設に際して手数料が発生する場合もあり、これが負担となることも考えられます。
さらに、開設までのプロセスが長引くこともあるため、急いで資金を準備したい場合には不便を感じることがあるでしょう。これらの点を考慮し、事前にしっかりと準備をしておくことが重要です。
条件が厳しい場合がある
銀行での家族信託を利用する際、条件が厳しい場合があることを理解しておくことが重要です。例えば、信託口座の開設には、受託者や受益者の資格に関する制約が設けられていることがあります。
また、信託財産の種類や金額に応じて、特定の条件を満たさなければならないこともあります。これにより、希望する信託が実現できないケースも考えられます。
さらに、銀行によっては、信託契約の内容や目的に対して厳格な審査を行うことがあり、これが手続きの遅延や不承認につながることもあります。
キャッシュカードや口座振替などを利用できない場合がある
銀行の家族信託口座を利用する際のデメリットの一つとして、キャッシュカードや口座振替が利用できない場合があることが挙げられます。
通常の銀行口座では、キャッシュカードを使ってATMから現金を引き出したり、口座振替で自動的に支払いを行ったりすることが可能ですが、家族信託専用口座ではこれらの機能が制限されることがあります。
このため、資金の管理や日常的な支払いに不便を感じることがあるかもしれません。特に、受益者が高齢者や障害を持つ方の場合、現金の引き出しや支払いがスムーズに行えないことが、生活に影響を及ぼす可能性があります。
家族信託で開設する銀行口座を選ぶときのポイントとは

家族信託で利用する銀行口座を選ぶ際には、いくつかのポイントが存在します。これから解説する要素を総合的に判断することで、信託運用が円滑に行える口座を選ぶことができます。
家族信託の取り扱いがあるか
銀行で家族信託を利用する際、まず確認すべきポイントは、その銀行が家族信託の取り扱いを行っているかどうかです。家族信託は比較的新しい制度であり、全ての銀行がこのサービスを提供しているわけではありません。
信託口口座を開設するためには、信託業務に関する専門知識を持つ銀行を選ぶことが重要です。信託口座を取り扱っている銀行は限られているため、事前に情報を収集し、複数の銀行を比較検討することをお勧めします。
また、信託業務に精通した担当者がいるかどうかも、スムーズな手続きに影響を与える要素となります。信頼できる銀行を選ぶことで、家族信託の運用がより円滑に進むでしょう。
口座開設時の条件を満たすか
銀行で家族信託を利用する際、口座開設にあたっては特定の条件を満たす必要があります。これらの条件は銀行によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。一般的には、信託契約の内容や受益者の情報、資産の種類などが求められます。
また、信託口口座を開設するためには、本人確認書類や印鑑証明書などの提出が必要になることが多いです。これらの条件をクリアしないと、口座開設ができない場合もあるため、慎重に準備を進めることが求められます。
特に、家族信託の利用を考えている方は、早めに必要書類を整え、銀行の窓口での相談を行うことをおすすめします。
口座開設までのスピードは早いか
銀行で家族信託を利用する際、口座開設のスピードは非常に重要な要素です。
相続が発生した場合、迅速に資金を引き出す必要があるため、口座開設にかかる時間が長引くと、受益者にとって不安要素となります。各銀行によって手続きの流れや必要書類が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
また、オンラインでの申し込みが可能な銀行も増えており、これにより手続きがスムーズに進む場合もあります。口座開設のスピードを重視することで、必要な資金を迅速に手に入れることができるため、銀行選びの際にはこの点をしっかりとチェックしましょう。
ATMの利用ができるか
銀行の家族信託口座を選ぶ際、ATMの利用が可能かどうかは重要なポイントです。一般的に、家族信託専用口座は通常の口座とは異なるため、ATMでの引き出しや入金が制限される場合があります。
特に、信託口座を開設する銀行によっては、ATM利用ができないこともあるため、事前に確認しておくことが必要です。
ATMを利用できる場合でも、手数料が発生することや、利用可能な時間帯が限られていることもあります。したがって、家族信託を利用する際には、ATMの利用条件や手数料についても十分に理解し、自分のライフスタイルに合った銀行を選ぶことが大切です。
まとめ
銀行での家族信託は、相続後の資金管理をスムーズに行うための有効な手段です。専用口座を利用することで、迅速な資金払い出しや受益者指定が可能になりますが、取扱銀行の制限や開設費用、キャッシュカードの利用不可といったデメリットも存在します。
家族信託を検討する際は、メリットとデメリットをしっかりと理解し、適切な銀行を選ぶことが重要です。信託の仕組みや手続きの流れを把握し、安心して資産管理を行いましょう。