相続登記とは?種類や自分で行う時の注意点を解説!
相続登記とは、相続で取得した不動産の名義を被相続人から相続人へ移転する登記手続きで、怠ると売却や融資が困難になるうえ放置期間に応じて過料が科される可能性があります。
本記事では、単独登記と共有登記の違い、申請に必要な戸籍類と添付書面、手続きの流れ、専門家へ依頼するときの費用相場や自力申請の注意点を詳しく説明します。
相続登記とは
相続登記とは、相続によって取得した不動産の名義を、被相続人から相続人へと移転するための登記手続きのことを指します。
この手続きは、相続が発生した際に必ず行わなければならない重要なプロセスです。相続登記を怠ると、将来的に不動産を売却したり、融資を受けたりする際に困難を伴うことがあります。
また、登記を行わずに放置していると、一定の期間が経過した後に過料が科される可能性もあるため、注意が必要です。相続登記は、相続人が不動産の権利を正式に主張するための手段であり、法律上の義務でもあります。
手続きを通じて、相続人は自分の名義で不動産を管理し、利用することができるようになります。これにより、相続人は不動産の売却や賃貸、さらには相続税の申告など、さまざまな手続きを円滑に進めることが可能となります。
本記事では、相続登記の種類や手続きの流れ、専門家に依頼する際の費用相場、自分で行う場合の注意点などについて詳しく解説していきます。
相続登記の種類とは

相続登記には主に「単独登記」と「共有登記」の2種類があります。それぞれの登記方法には特徴があり、相続人の状況に応じて選択することが重要です。
単独登記
相続登記の一つの形態である単独登記は、相続人が相続した不動産の名義を自分一人の名義に変更する手続きです。この方法では、相続人が複数いる場合でも、特定の相続人がその不動産を単独で相続することができます。
単独登記を行うことで、相続人はその不動産に対する完全な権利を持つことになり、将来的な売却や貸出、融資の際にもスムーズに手続きを進めることが可能です。
単独登記を行うためには、まず相続人がその不動産を相続することが確定している必要があります。遺言書がある場合は、その内容に従って手続きを進めます。
遺言書がない場合は、遺産分割協議を行い、相続人全員の合意を得ることが求められます。合意が得られた後、必要な書類を整え、法務局に申請を行うことで、単独登記が完了します。
この手続きは比較的シンプルですが、注意が必要な点もあります。特に、相続人が他にいる場合は、遺産分割協議が円滑に進むように配慮することが重要です。
共有登記
共有登記とは、相続によって取得した不動産を複数の相続人が共同で所有する形で登記することを指します。この場合、各相続人の持分が明確にされ、登記簿に記載されるため、誰がどの程度の権利を持っているかが一目でわかります。
共有登記は、特に相続人が複数いる場合に選ばれることが多く、相続人同士の合意があれば、持分の割合を自由に設定することが可能です。
共有登記のメリットとしては、相続人全員が不動産を共同で管理できる点が挙げられます。例えば、相続した不動産を売却する際には、全員の同意が必要ですが、共有登記を行うことで、権利関係が明確になり、トラブルを避けやすくなります。
また、相続人の一人が不動産を利用する場合でも、他の相続人との協議を通じて利用条件を決めることができるため、柔軟な対応が可能です。
ただし、共有登記には注意点もあります。相続人の一人が不動産を売却したい場合、他の相続人の同意が必要となるため、意思疎通が重要です。また、共有者の中に相続放棄をした人がいる場合や、相続人の一人が亡くなった場合には、権利関係が複雑になることがあります。
相続登記をしないデメリットとは

相続登記を怠ると、さまざまなデメリットが生じます。これから解説するリスクを避けるためにも、早めの相続登記が重要です。
売りたいときに売れなくなる
相続登記を怠ると、将来的に不動産を売却したいと考えた際に大きな障害となります。相続登記が行われていない場合、名義が被相続人のままとなり、相続人がその不動産を売却することができません。
これは、名義人が亡くなったことにより、法的にその不動産を売る権利を持つのは相続人であるにもかかわらず、登記がされていないために手続きが進まないからです。
また、相続登記を行わないことで、売却時に必要な書類の準備が複雑になり、時間がかかることもあります。例えば、相続人全員の同意が必要な場合、遺産分割協議を行う必要があり、その結果を反映させるための手続きも増えます。
このように、相続登記を怠ることで、売却を希望するタイミングでスムーズに手続きを進められなくなるリスクが高まります。
さらに、相続登記を行わないことで、将来的に不動産の価値が下がる可能性も考えられます。市場の動向や地域の発展状況によっては、売却を希望する時期に不動産の価値が大きく変動することがあります。
不動産の権利関係が複雑になる
相続登記を行わない場合、最も大きなデメリットの一つは不動産の権利関係が複雑になることです。相続が発生した際に、名義変更を怠ると、相続人の間で権利の主張が生じる可能性があります。
特に、複数の相続人がいる場合、誰がどのような権利を持っているのかが不明確になり、トラブルの原因となることが多いです。
また、相続登記を行わないことで、将来的に不動産を売却したり、担保に入れたりする際に、権利関係の確認が難しくなります。これにより、売却の際に買主が不安を感じ、取引が成立しないことも考えられます。
さらに、相続人の一人が不動産を売却したいと考えた場合でも、他の相続人の同意が必要となり、手続きが煩雑化することが避けられません。
このように、相続登記を怠ることで不動産の権利関係が複雑化し、将来的なトラブルを招くリスクが高まります。したがって、相続が発生した際には速やかに相続登記を行うことが重要です。
自分の所有物であることの証明が難しくなる
相続登記を行わない場合、相続した不動産が自分の所有物であることを証明するのが非常に難しくなります。登記がされていないと、法的にはその不動産の名義が被相続人のままとなり、相続人であることを示す証拠が不足してしまいます。
このため、将来的に不動産を売却したり、融資を受けたりする際に、所有権を証明するための手続きが煩雑になり、時間や労力がかかることになります。
また、相続登記を怠ることで、他の相続人との間で権利関係が不明確になり、トラブルの原因となることもあります。特に、相続人が複数いる場合、誰がどのような権利を持っているのかが曖昧になり、後々の争いに発展する可能性も否定できません。
これらの理由から、相続登記は早めに行うことが重要です。自分の所有物であることを明確にするためにも、適切な手続きを踏むことが求められます。
相続登記の流れとは

相続登記を行う際には、いくつかのステップを踏む必要があります。これから解説する流れを理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
相続する不動産を確認する
相続登記を行うための第一歩は、相続する不動産を確認することです。相続対象となる不動産は、土地や建物などさまざまですが、まずは被相続人が所有していた不動産の一覧を把握することが重要です。
これには、登記簿謄本を取得することが必要です。登記簿謄本には、不動産の所在地や面積、所有者の情報が記載されており、相続手続きにおいて非常に重要な書類となります。
不動産の確認作業では、複数の不動産が存在する場合も考慮しなければなりません。例えば、実家の土地や建物だけでなく、投資用の不動産や相続時に取得した別荘なども含まれます。
また、相続する不動産が共有名義の場合、各相続人の持分を確認することも重要です。持分の割合によって、今後の管理や売却に影響が出るため、事前にしっかりと確認しておくことが求められます。
遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決める
相続登記を進める上で、まず重要なのは、相続する不動産の名義を誰に引き継ぐかを明確にすることです。このプロセスには、遺言書の存在や遺産分割協議が関わってきます。
遺言書がある場合、被相続人が生前に指定した相続人がその不動産を引き継ぐことになります。遺言書は法的効力を持つため、相続人はその内容に従って手続きを進めることが求められます。
一方、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの不動産を相続するかを話し合う必要があります。この協議は、相続人全員の合意が必要であり、合意が得られた場合には「遺産分割協議書」を作成します。この書類は、相続登記の際に必要な重要な書類となります。
遺言や遺産分割協議を通じて引き継ぐ人を決めることは、相続登記の手続きを円滑に進めるための第一歩です。相続人間でのトラブルを避けるためにも、早めに話し合いを行い、必要な書類を整えておくことが大切です。
相続登記に必要な書類を収集・作成する
相続登記を行うためには、必要な書類を正確に収集し、作成することが重要です。まず、相続人を証明するための戸籍謄本が必要です。
これは、被相続人の出生から死亡までの戸籍を含むもので、相続人の関係を明確にするために欠かせません。また、相続人全員の戸籍謄本も必要となりますので、各自の戸籍を取り寄せておくことが大切です。
次に、相続する不動産の登記簿謄本を取得する必要があります。これにより、対象となる不動産の詳細情報や権利関係を確認できます。登記簿謄本は法務局で取得可能で、オンラインでも申請できる場合があります。
さらに、遺言書がある場合は、その写しも必要です。自筆証書遺言の場合は、検認を受けた証明書も添付する必要があります。遺言書がない場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名と押印を求めることが求められます。
これらの書類を整えたら、相続登記申請書を作成します。この申請書には、相続人の情報や不動産の詳細を記載し、必要書類を添付して法務局に提出します。
管轄の法務局へ申請する
相続登記の手続きが整ったら、次は管轄の法務局へ申請を行います。法務局は、地域ごとに設置されており、相続する不動産の所在地によって管轄が決まります。
まずは、どの法務局に申請を行うべきかを確認しましょう。一般的には、相続する不動産の登記簿に記載されている所在地を基に、該当する法務局を特定します。
申請方法は、窓口での対面申請と郵送申請の2通りがあります。対面申請の場合、必要書類を持参し、窓口で手続きを行います。この際、書類に不備がないか確認してもらえるため、安心感があります。
一方、郵送申請では、必要書類を揃えて郵送する必要がありますが、手続きが完了するまでに時間がかかることがありますので、余裕を持ったスケジュールで行うことが大切です。
申請にあたっては、必要書類をすべて揃えておくことが重要です。戸籍謄本や遺産分割協議書、登記申請書など、必要な書類が不足していると、申請が受理されない場合があります。
相続登記を自分で行う時の注意点

相続登記を自分で行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これから解説する手続きを怠ると、後々のトラブルにつながる可能性があるため、慎重に進めることが求められます。
必要な戸籍謄本をしっかり揃える
相続登記を行う際には、必要な戸籍謄本をしっかりと揃えることが重要です。戸籍謄本は、被相続人と相続人の関係を証明するための基本的な書類であり、相続登記の申請に欠かせません。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、そして相続人の戸籍の附票が必要になります。
特に注意が必要なのは、戸籍謄本の取得に時間がかかる場合があることです。市区町村の役所での手続きが必要なため、事前に必要な書類を確認し、早めに取得しておくことをお勧めします。
また、相続人が複数いる場合は、全員の戸籍謄本を揃える必要があるため、手間がかかることもあります。さらに、戸籍謄本の有効期限についても注意が必要です。登記申請時に提出する戸籍謄本は、通常、発行から3ヶ月以内のものが求められます。
これを超えると、再度取得しなければならないため、スケジュールに余裕を持って準備を進めることが大切です。正確な書類を揃えることで、スムーズな相続登記手続きが実現できるでしょう。
登記簿上の住所と死亡時の住所を揃える
相続登記を行う際には、登記簿上の住所と被相続人の死亡時の住所が一致していることが重要です。この一致がない場合、登記手続きがスムーズに進まない可能性があります。
具体的には、登記簿に記載されている住所が古いものであったり、変更が反映されていない場合、法務局からの指摘を受けることがあります。
そのため、まずは登記簿を確認し、必要に応じて住所変更の手続きを行うことが求められます。住所変更には、住民票の写しや戸籍謄本などの書類が必要となることが多いため、事前に準備しておくと良いでしょう。
また、死亡時の住所が登記簿上の住所と異なる場合、相続人がその住所に居住していることを証明する書類も求められることがあります。
このように、登記簿上の住所と死亡時の住所を揃えることは、相続登記を円滑に進めるための重要なステップです。手続きを行う前に、これらの情報をしっかりと確認し、必要な書類を整えておくことが、後々のトラブルを避けるためにも大切です。
自筆証書遺言の検認を受ける
自筆証書遺言を用いて相続手続きを進める場合、まず重要なのが「検認」の手続きです。自筆証書遺言は、遺言者が自らの手で書いた遺言であり、法的効力を持つためには、家庭裁判所での検認が必要です。この検認は、遺言の内容を確認し、遺言者の意思を尊重するための重要なステップとなります。
検認の手続きは、遺言者が亡くなった後、相続人が家庭裁判所に申し立てを行うことで始まります。申し立てには、遺言書そのものと、遺言者の死亡を証明する戸籍謄本などの書類が必要です。
検認が行われると、遺言書の内容が正式に確認され、相続人はその内容に基づいて相続手続きを進めることができます。
なお、検認を受けずに自筆証書遺言をそのまま使用することはできませんので、必ずこの手続きを経ることが求められます。また、検認の際には、相続人全員が出席することが望ましく、遺言の内容について異議がある場合は、その場で意見を述べることができます。
自筆証書遺言の検認を受ける
自筆証書遺言を用いて相続手続きを進める場合、まず重要なのが「検認」という手続きです。自筆証書遺言は、遺言者が自ら手書きで作成した遺言書ですが、法的効力を持たせるためには、家庭裁判所での検認が必要です。
検認を受けるためには、遺言書を持参し、家庭裁判所に申し立てを行います。この際、遺言書の原本が必要であり、コピーでは受理されません。
また、遺言書の検認は、相続人全員が出席する必要はありませんが、相続人の中から代表者が出席することが一般的です。検認が行われると、遺言書の内容が正式に確認され、相続手続きが進められることになります。
なお、検認を受ける際には、遺言書が有効であるかどうかの判断も行われます。例えば、遺言書が法的要件を満たしていない場合、無効とされることもあります。
そのため、遺言書を作成する際には、法律に則った形式で作成することが重要です。検認を受けることで、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、後々のトラブルを避けることにもつながります。
まとめ
相続登記は、相続によって取得した不動産の名義を正式に移転するための重要な手続きです。これを怠ると、将来的に不動産の売却や融資が難しくなるだけでなく、放置期間に応じて過料が科されるリスクもあります。
本記事では、相続登記の種類や手続きの流れ、さらには自分で行う際の注意点について詳しく解説しました。相続登記には、単独登記と共有登記の2つの種類があり、それぞれの特徴を理解することが重要です。
また、相続登記を行わない場合のデメリットも多岐にわたります。特に、売却時に不便を感じたり、権利関係が複雑になったりすることは避けたいものです。
手続きの流れを把握し、必要な書類をしっかりと揃えることで、スムーズに相続登記を進めることができます。自力で申請を行う場合は、特に注意が必要なポイントがいくつかありますので、事前に確認しておくことが大切です。