相続税の延納は分納可能?方法と金利の徹底検証
「相続税の支払いが一括では難しい。延納や分納ってできるのだろうか。」
「分割払いにした場合の金利や手続きがどうなるのだろう。」
相続税の負担は大きく、急にまとまったお金が必要となり驚いてしまうことが少なくありません。そんなとき、延納や分納という仕組みがあると大変助かりますし、有効であると考えられます。
この記事では、相続税の分割払いの方法や金利について、
- 相続税の延納や分納が可能な条件
- 実際の手続きの流れや必要な書類
- 延納時にかかる金利や注意点
これらのポイントを解説しています。
相続税の延納と分納の基礎知識
原則として相続税の納付は、現金での一括払いです。しかし、資金の都合がつかない場合には「延納」や「分納」という制度が用意されています。これらは相続税の負担を分散し、納税者の生活や事業の継続を守るための重要な仕組みです。特に、資産はあるものの流動性が低い不動産や株式などで相続した方にとって、延納や分納は現実的な選択肢となるでしょう。納付方法を柔軟に選べることは、相続人にとって精神的・経済的な負担軽減につながります。例えば、相続税額が高額で現金一括納付が難しいケースや、相続財産が不動産中心の場合など、延納や分納の活用が有効です。
延納とは?分納との違いを解説
相続税の延納とは、相続税を一度に全額支払うのが難しい場合に、何回かに分けて納める制度です。延納は税金の「分割払い」と考えると分かりやすいでしょう。
一方、分納という言葉もよく使われますが、これは延納の中で毎年決められた金額を納めていくことを指します。つまり、延納の手続きを取ることで「分納」が可能になる仕組みです。「まとまったお金が用意できないかもしれない…」と不安な方には心強い制度といえます。延納は国税庁に申請し認められる必要があり、誰でも利用できるわけではありません。
分納は延納の一部であり、特別な手続きは不要です。このように、延納と分納は密接に関係していますが、延納の申請が前提となる点に注意しましょう。
相続税の延納が可能な条件
相続税の延納を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。延納は納税者の負担軽減を目的としていますが、誰でも認められるわけではありません。要件を正確に理解し、自分の状況が該当するかを事前に確認することが大切です。
なぜなら、延納は国税庁が定める基準に基づき認可される制度であり、基準を満たさなければ申請しても認められないからです。例えば、相続税額が一定額を超えていることや、一括納付が経済的に困難であることなど、具体的な条件が定められています。さらに、担保の提供や申請書類の提出期限も厳守しなければなりません。
これらの条件をクリアすることで初めて延納の申請が可能となります。
相続税額が一定額を超える必要性
相続税の延納を利用するには、相続税額が10万円を超えていることが必要です。これは、少額の納税であれば分割払いの手間や管理コストがかかるため、国が一定額以上の場合にのみ延納を認めているからです。申告書に記載された納税額が10万円を超えていれば延納申請が可能です。
ただし、延納を希望する場合は、相続税の申告期限までに申請手続きを行う必要があります。10万円以下の場合は、延納が認められず一括納付が原則となるため注意が必要です。要点として、相続税の延納は納税額が10万円を超える場合に限り利用できる仕組みであり、少額の場合は一括払いが求められる点を理解しておきましょう。
一括納付が困難な場合の対応
相続税を一括で納めることが難しい場合、延納という分割払いの方法を利用できます。結論から言うと、現金での一括納付が困難な場合には、税務署へ「延納申請書」を提出することで分納が認められる可能性があります。たとえば、「相続財産は土地が多く、すぐに現金化できない…」と悩む方もいるでしょう。
延納は、現金が手元にない状況でも、相続税を数年かけて支払うことを認める制度です。ただし、延納には税務署の審査があり、納税者が本当に一括納付できない事情が必要です。また、延納を利用する際は、納付計画や担保の提供が求められる場合もあります。延納を希望するなら、申請期限や必要書類をしっかり確認し、早めに準備することが重要です。このように、一括納付が難しい場合は延納を活用することで、無理なく相続税の納付が可能となります。
担保の提供が求められる理由
相続税の延納を希望する際には、原則として担保の提供が求められます。これは、国が「きちんと分割で納税してもらえるだろうか…」と不安を感じるため、もし延納者が途中で支払いをやめてしまった場合でも、国が未納分を回収できるようにするためです。
担保としてみなされるものとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
・土地
・建物
・有価証券
・預貯金
担保としては、上記のように価値が安定しているものが選ばれます。担保を提供する理由は、国にとって未回収リスクを減らすだけでなく、納税者にも「分割で納める安心感」を与える役割もあります。担保の提供は、延納制度を安全に利用するための大切な条件であり、納税義務者と国双方の信頼関係を保つ仕組みです。
必要書類の提出期限について
相続税の延納を希望する場合、必要書類の提出期限は非常に重要です。相続税の申告期限(原則として相続開始を知った日から10か月以内)までに、延納申請書と必要な書類を税務署へ提出しなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、延納が認められなくなります。
延納をするための申請書類としては、どのようなものがあるのでしょうか。延納申請としては、以下のようなものが挙げられます。
・相続税申告書
・財産目録
・納付が困難な理由を記載した書類
・担保に関する資料
書類の取り寄せ、準備には想定外に時間がかかる場合もあるため、早めの対応に努めましょう。再度強調してお伝えしますが、相続税の延納申請書類は申告期限までに必ず提出すること、これが延納認可のための絶対条件です。
延納の手続きと必要書類
相続税の延納を利用する際には、所定の手続きと必要書類の準備が不可欠です。手続きの流れや必要書類について、下記で詳しく説明します。
延納手続きの流れ
相続税の延納手続きは、まず相続税の申告期限である「相続開始から10か月以内」に税務署へ延納申請書を提出することから始まります。結論として、申請の際は「一括で納めるのが難しい理由」や「延納したい税額」などを明確に書類に記載し、必要な添付書類とともに提出する必要があります。延納申請後、税務署が内容を審査し、認められれば分割払いが可能となります。「本当に分納が認められるのだろうか…」と不安に感じる方もいるでしょうが、正確な書類準備と期限厳守が認可のポイントです。担保の提供が必要な場合は、その詳細も申請時に伝える必要があります。手続きの流れを押さえることで、相続税の延納申請がスムーズに進むでしょう。
必要となる書類一覧
相続税の延納を申請する際には、いくつかの書類を期限内に揃えて提出しなければなりません。必要書類としては以下のようなものが挙げられます。
・相続税延納申請書
・財産及び債務の明細書
・担保提供に関する書類
などとなります。財産及び債務の明細書では、相続財産の内容や評価額、負債の詳細を正確に記載する必要があります。担保提供書類は、土地や建物などを担保とする場合に必須となります。そのほか、不動産登記事項証明書や評価証明書なども求めらます。多くの書類を準備する必要がありますが、要点としては、税務署の指示に従い、漏れなく揃えることが重要です。

延納のメリットとデメリット
相続税の延納には、分割して納付できるという大きなメリットがありますが、反対にデメリットもあります。以下にて改めて、相続税の延納選んだ場合のメリットとデメリットについて記します。
延納の利点とは
延納のメリットとは、上記にてお伝えをしたように相続税を一度に支払えない場合でも、分割して納付できる点にあります。まとまった現金が手元にない方や、不動産など現金化しづらい財産が多い方にとって、一括での納付は困難となることが多いため、非常に便利な制度であると言えます。
最大で20年にわたり年1回ずつ分納できるため、相続税の支払いのために財産を急いで売却し、現金化するという必要がなくなります。特に、相続財産の多くが自宅や土地といった不動産で、手続にお困りの場合には大きなメリットとなると言えるでしょう。生活基盤を守りながら計画的に納税できる、これが延納を選択した場合の最大の特徴であると言えます。
延納の注意点とリスク
延納には大きなメリットがある一方で、デメリットもあります。延納を選択した場合、利子税が発生し、通常の納付よりも最終的な負担額が増えることなります。
利子税とは、延納期間中にかかる追加の税金のことです。年ごとに決められる金利が適用されるため、随時確認をしておきましょう。参照:「延滞税・利⼦税・還付加算⾦について」財務省
延納を選択し、長期間にわたって支払いを続けることで、想定以上の総額になる場合も見られます。また、担保の提供が原則必要となります。担保にできる財産がなかったり、限られている場合は延納の利用が難しいこともあります。
相続税延納の金利と利子税について
次に、相続税の延納を検討する際の金利や利子税の仕組みについてご説明します。延納申請時には、この金利や利子税がどのように計算されるかを正確に把握することが重要であると言えるでしょう。
基準となる金利の詳細
相続税を延納する場合の金利、これは国税庁が毎年設定する「延納利子税率」に基づいて計算されます。2024年時点では、担保を提供した場合で年1.0%、担保がない場合は年2.7%と定められています。延納を選ぶと、納税額にこの金利が加算されるため、端的に言って支払総額が増えることになります。
さらに当然のようではありますが、延納期間が長くなるほど利子の総額も大きくなります。そのため、金利と最終的に支払いをする総額を事前によく検討した上、相続税の延納システムを利用することが重要です。
そして上記でもお伝えしましたが、金利は経済状況によって毎年見直されるため、申請時に最新の税率を確認することも重要なポイントです。
延納利子税の計算方法
延納利子税の計算方法は、相続税の延納を検討する際に非常に重要です。延納を利用すると、相続税を分割で支払うことができますが、その分利子税がかかるため、最終的な支払額が増える点について十分に加味しておきましょう。
利子税は、税務署が定める年ごとの「延納利子税率」に基づいて計算されます。たとえば、2024年度の延納利子税率は年1.2%です。さらに、延納期間や担保の有無によって異なる場合もあります。
計算方法としては、延納した金額に利子税率をかけて算出することになります。たとえば、延納額が1,000万円で利子税率が1.2%の場合、1年間で12万円の利子税が発生します。延納利子税の計算方法、計算した上での支払い見込み金額について、事前にしっかり確認をすることが重要です。
相続税の延納と分納に関するQ&A
最後に、相続税の延納や分納に関するよくある質問、疑問について記します。延納制度は一括納付が難しい場合に相続税を分割して支払える仕組みであり、経済的負担を軽減する重要な手段といえるでしょう。相続税の延納や分納に関する実務的なポイントについて、以下で解説いたします。
延納期間中の繰上返済は可能?
延納期間中に繰り上げをして返済することはできるのでしょうか。相続税の延納期間中でも繰上返済は可能です。相続税の延納を選択したけれど、「途中でまとまったお金が手に入ったから早く返してしまいたい。」といった場合の希望にかないます。
延納期間中に余裕ができた場合は、残りの税額を前倒しで納めることが認められています。繰上返済を行うことで、利子税の負担を減らすことができます。これは、結果的に総支払額を抑えられるという大きなメリットであると言えるでしょう。
ただし、繰上返済を希望する際は、税務署に申し出て必要な手続きを踏む必要があるため、余裕をもって手続き方法について確認をし、申請をするようにしましょう。
担保にできない財産とは?
相続税の延納を申請する際、担保が必要となることは上記にてお伝えしたとおりですが、担保として提出できない財産がある点に注意が必要です。担保として認められないものには以下のようなものが挙げられます。
・現金
・預金
・生命保険金の請求権
・債権 ※国債を除く
これらの財産が容易に換金・移転できるため、税務署が確実に回収できるという保証がないためです。担保にできるのは、土地や建物、国債などの確実な価値があるものに限られます。また、共有名義の財産や、他人の権利が付いている不動産も原則として担保にはできません。これもまた、確実に回収できるという見込みが立てられないためです。担保にできるかどうか迷った場合は、税務署に事前に相談、もしくは専門家に相談することが重要です。
まとめ:相続税の延納で分納を考える方へ
今回は、相続税の延納や分納について、
- 相続税の延納が認められる条件や手続き方法
- 延納を利用した場合の分割払いの仕組みと注意点
- 延納にかかる金利やその計算方法
上記にポイントを解説いたしました。
延納制度を正しく理解し、情報を集め、必要に応じて専門家へ相談することが大切であると言えます。延納の仕組みや金利についてしっかりと理解し、無理のない納税計画を立てていきましょう。そうすることで安心して手続きを進められます。