遺産分割協議とは?進め方や収束しないときの対処法を解説!
遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を決定する話し合いで、協議書を作成し全員が署名押印することで法的効力が生じます。
本記事では遺言書の確認から財産・相続人調査、協議書作成、名義変更までの手順とポイントを解説し、協議がまとまらない場合の調停・審判への移行手続き、未成年相続人がいる場合の特別代理人選任など実務上の注意点を示します。
遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人全員が集まり、故人の遺産をどのように分けるかを話し合うプロセスです。この協議は、相続人の合意に基づいて行われ、最終的には協議書を作成し、全員が署名押印することで法的効力を持ちます。
遺産分割協議は、相続人間のトラブルを避けるためにも重要なステップであり、円滑に進めることが求められます。
遺産分割協議の進め方とは

遺産分割協議を円滑に進めるためには、いくつかのステップを踏むことが重要です。これから説明する手順をしっかりと踏むことで、スムーズな協議が実現します。
遺言書の有無を確認する
遺産分割協議を進めるにあたり、まず最初に確認すべきは遺言書の有無です。遺言書が存在する場合、その内容が相続人間の話し合いに大きな影響を与えるため、必ず確認する必要があります。
遺言書には、被相続人がどのように遺産を分ける意向を示しているかが記載されており、法的効力を持つため、相続人はその内容に従う義務があります。
遺言書が見つかった場合は、その内容を相続人全員で確認し、理解を深めることが重要です。一方、遺言書が存在しない場合は、相続人全員で協議を行い、遺産の分配方法を決定することになります。
相続人を把握する
遺産分割協議を進める上で、まず重要なのは相続人を正確に把握することです。相続人とは、故人の遺産を受け継ぐ権利を持つ人々のことを指します。
一般的には、配偶者や子供、親、兄弟姉妹などが該当しますが、相続人の範囲は法律によって定められています。相続人を特定するためには、故人の戸籍謄本を取得し、家族構成を確認することが必要です。
また、相続人が亡くなっている場合、その子供が代襲相続人となることもありますので、注意が必要です。全ての相続人が協議に参加することが求められるため、漏れがないようにしっかりと確認を行いましょう。
相続財産を把握する
遺産分割協議を進める上で、相続財産を正確に把握することは非常に重要です。相続財産には、不動産、預貯金、株式、貴金属、動産などが含まれます。
まずは、被相続人が所有していた財産のリストを作成し、各財産の評価額を確認しましょう。これにより、相続人間での公平な分配が可能になります。
また、財産の中には負債も含まれるため、借金やローンの有無も調査し、全体の資産状況を把握することが必要です。相続財産の正確な把握は、円滑な遺産分割協議を進めるために非常に重要です。
遺産の分け方についての話し合いを行う
遺産分割協議の重要なステップの一つが、遺産の分け方についての話し合いです。この段階では、相続人全員が集まり、各自の希望や意見を出し合います。
遺産の分配方法には、現物分割、代償分割、共有分割などの方法があり、それぞれのメリットとデメリットを理解することが重要です。
話し合いでは、相続人間の感情や意見の対立が生じることもありますが、冷静に話し合うことが円滑な協議の鍵となります。全員が納得できる形で遺産を分けるためには、相続人同士のコミュニケーションを大切にし、必要に応じて専門家の意見を求めることも有効です。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議がまとまったら、次に重要なのが遺産分割協議書の作成です。この協議書は、相続人全員が合意した内容を文書として残すものであり、法的効力を持ちます。
協議書には、相続人の氏名、相続財産の詳細、分割方法などを明記する必要があります。全員が署名押印を行うことで、協議書は正式なものとなり、今後のトラブルを防ぐための重要な証拠となります。
作成にあたっては、相続人全員が納得する内容であることが求められます。特に、相続財産の評価額や分割方法については、事前にしっかりと話し合いを行い、合意を得ることが大切です。
各相続財産の名義変更を行う
遺産分割協議が無事に終了した後は、相続財産の名義変更を行う必要があります。名義変更は、相続人が実際にその財産を利用できるようにするための重要な手続きです。具体的には、不動産や預貯金、株式などの名義を、被相続人から相続人へと変更します。
不動産の場合、登記所での名義変更手続きが必要です。この際、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書、被相続人の戸籍謄本などの書類を提出します。
また、預貯金や株式についても、金融機関や証券会社に必要書類を提出し、名義変更を行います。これらの手続きを適切に行うことで、相続人は正式に財産を受け継ぐことができます。
遺産分割協議書の作成手順とは

遺産分割協議書の作成は、相続人全員が合意した内容を文書化する重要なステップです。これから説明する手順を正しく踏むことで、遺産分割協議書を作成することができます。
相続人を確定させる
遺産分割協議を進める上で、最初に行うべき重要なステップは相続人を確定させることです。相続人とは、故人の遺産を受け継ぐ権利を持つ人々のことを指します。
相続人の範囲は、法律に基づいて決まっており、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などが含まれます。まずは、故人の家族構成や親族関係を確認し、法定相続人を特定することが必要です。
また、相続人が複数いる場合は、全員が協議に参加することが求められます。相続人の中には、未成年者や行方不明の人がいる場合もあるため、その場合は特別代理人の選任が必要になることもあります。
被相続人の財産を確定させる
遺産分割協議を進める上で、被相続人の財産を正確に確定させることは非常に重要です。まず、被相続人が所有していた不動産、預貯金、株式、保険などの資産をリストアップします。
また、負債も含めて確認する必要があります。これにより、相続人が受け取るべき遺産の総額を把握することができます。
財産の調査は、登記簿や金融機関の明細書、保険証券などの書類を基に行います。特に不動産については、登記情報を確認し、所有権の状況を明確にすることが求められます。
遺産分割協議を行う
遺産分割協議は、相続人全員が集まり、被相続人の遺産をどのように分けるかを話し合う重要なプロセスです。この協議は、相続人間の合意形成を目指すものであり、円滑に進めるためには事前の準備が欠かせません。
まず、遺言書の有無を確認し、相続人を把握することが基本です。次に、相続財産の内容を明確にし、各相続人の希望を尊重しながら話し合いを進めます。
最終的には、合意内容を文書化した遺産分割協議書を作成し、全員が署名押印することで法的効力を持つことになります。このように、遺産分割協議は相続手続きの中で非常に重要なステップであり、慎重に進めることが求められます。
合意内容を記載して遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議が無事に進み、相続人全員が合意に達したら、次のステップは遺産分割協議書の作成です。
この協議書は、相続人全員の合意内容を明確に記載した重要な文書であり、法的効力を持ちます。協議書には、各相続人の名前、相続財産の詳細、分割方法、そして全員の署名と押印が必要です。
協議書を作成する際は、合意内容が正確に反映されているかを確認することが重要です。また、相続人が未成年の場合は、特別代理人の署名も必要となるため、注意が必要です。協議書が完成したら、各相続人がそれぞれのコピーを保管し、今後の手続きに備えましょう。
遺産分割協議に関する注意点とは
遺産分割協議を進める際には、いくつかの注意点があります。これから説明する点を理解しておくことが重要です。
基本的に一回で終わらせる
遺産分割協議は、相続人全員が参加し、遺産の分け方を決定する重要なプロセスです。この協議は基本的に一度で終わらせることが望ましいとされています。
なぜなら、何度も協議を繰り返すことは、相続人間の関係を悪化させる可能性があるからです。協議が長引くと、感情的な対立が生じやすく、最終的には合意に至ることが難しくなることもあります。
また、遺産分割協議のやり直し自体は、相続人の全員が合意すれば可能ですが、一度有効になった遺産分割協議をやり直すと、贈与税や譲渡所得税が発生します。税金を支払うことになるリスクを考えると、遺産分割協議のやり直しはできるだけ避けるべきでしょう。
遺言書の分割方法を変更することはできない
遺産分割協議において、遺言書が存在する場合、その内容は法的に拘束力を持ちます。つまり、遺言書に記載された分割方法を変更することは基本的にできません。
相続人全員が合意した場合でも、遺言書の内容を無視して新たな分割方法を決定することはできないため、注意が必要です。遺言書の内容に従って遺産を分けることが求められ、相続人はその内容を尊重しなければなりません。
したがって、遺言書の内容を確認し、理解した上で協議を進めることが重要です。もし遺言書の内容に不満がある場合は、法的手続きを通じて解決を図る必要があります。
借金は遺産分割協議の対象外になる
遺産分割協議において、相続人が話し合うのは主に被相続人の財産ですが、借金については特別な扱いがあります。
基本的に、被相続人が残した借金は遺産分割協議の対象外となります。これは、相続人が被相続人の負債をそのまま引き継ぐことになるため、相続人の負担を軽減するための措置です。
ただし、借金が遺産の一部として扱われる場合もあります。例えば、相続人が相続放棄をしない限り、借金は相続財産の中で考慮されることになります。このため、相続人は借金の存在をしっかりと把握し、必要に応じて相続放棄を検討することが重要です。
相続人が未成年の場合は特別代理人を選任する
相続人の中に未成年者がいる場合、遺産分割協議を進めるためには特別代理人を選任する必要があります。
未成年者は法的に自らの権利を行使することができないため、親権者がその役割を担うことが一般的ですが、親権者自身が相続人である場合には利益相反が生じる可能性があります。
特別代理人は、未成年者の利益を守るために遺産分割協議に参加し、適切な判断を行う役割を担います。選任された特別代理人は、未成年者の意向を尊重しつつ、相続人全体の合意形成を図ることが求められます。
遺産分割協議が収束しない場合の対処法とは

遺産分割協議が進まず、意見が対立することは珍しくありません。そのような状況に陥った場合の対処法について、このセクションでは解説します。
遺産分割調停を申し立てる
遺産分割協議が進まず、相続人間で意見が対立してしまった場合、遺産分割調停を申し立てることが有効な手段となります。遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員会(裁判官1名と民間委員2名)が中立的立場で合意形成を支援する手続です。
このプロセスでは、相続人全員が出席することが求められ、調停委員がそれぞれの意見を聞きながら、合意に向けた助言を行います。
全員同意で調停調書が作成されると確定判決と同一の執行力を持ち、不履行者には強制執行も可能です。このステップは、柔軟な分割案や支払猶予案を提示できるため、感情的対立を法的・経済的コストを抑えて解決する有効な手段とも言えます。
遺産分割審判に移行する
遺産分割審判は、調停が不成立となった場合、家庭裁判所の裁判官が職権で分割方法を決定する最終手段です。期日は概ね月一回、五回前後の審理で半年から一年程度で結論に至る例が多いといわれます。
審判書が確定すると家事事件手続法七十五条により債務名義と同等の効力を持ち、不動産競売や預金差押えなど強制執行も可能です。
しかし、裁量判断で想定外の結果や費用負担が増える恐れがあるため、申立後も和解協議を継続し、調停に準じた自主合意を探る姿勢が推奨されます。さらに、審判結果に不服がある場合は二週間以内に即時抗告できるものの、事実認定は覆りにくい点にも注意が必要です。
まとめ
遺産分割協議は、相続人全員が集まり、故人の遺産をどのように分けるかを話し合う重要なプロセスです。協議を円滑に進めるためには、遺言書の確認や相続人、相続財産の把握が不可欠です。
また、協議がまとまらない場合には、調停や審判といった法的手続きを検討する必要があります。相続は感情的な問題を伴うことが多いため、冷静に進めることが大切です。この記事を参考に、適切な手続きを踏んで円満な遺産分割を実現しましょう。
参考:遺産分割の交渉術感情を書類で表現する方法 遺産分割協議書の書き方や銀行口座名義変更が解決できる |相続これ1冊継承ノ綴り