豊中の認知症対策|任意後見と家族信託の違いを解説
「親が認知症になったら、預金が引き出せなくなると聞いたけれど本当?」「任意後見と家族信託、どちらを準備すればいいのか分からない」——豊中市にお住まいで、こうした不安を抱えていませんか。
認知症になってからでは準備できない制度があることをご存知でしょうか。この記事では、豊中市にお住まいの方に向けて、認知症対策がなぜ必要なのか、任意後見制度と家族信託それぞれの仕組みとメリット・デメリット、そしてどちらを選ぶべきかの考え方まで、順を追って解説します。
なぜ今、認知症対策が必要なのか
認知症になると、預金の引き出しや不動産の売却ができなくなる
認知症などによって判断能力が低下すると、法律上、本人が単独で有効な契約を結ぶことが難しくなります。その結果、銀行の窓口では、本人確認の際に判断能力の低下が疑われると、預金の引き出しや解約に応じてもらえなくなることがあります。これがいわゆる「口座凍結」です。不動産の売却や、生命保険の解約なども同様に、本人の意思確認ができなければ手続きが進められなくなります。
例えば、親が介護施設に入所することになり、その費用を工面するために自宅を売却しようとしても、親自身の判断能力が低下していれば、売買契約を結ぶこと自体ができません。家族が「本人のために」と思って動いても、本人名義の財産である以上、家族が代わりに自由に処分することはできないのです。このような事態は、実際に多くのご家庭で起きている現実的な問題です。
豊中市の高齢化の実情
豊中市の計画資料によると、同市の高齢化率(65歳以上人口の割合)は令和2年(2020年)時点で25.7%に達しており、65歳以上人口は平成24年(2012年)からの約8年間で1.2倍程度に増加しています。また、高齢者が一人で暮らす「高齢者単独世帯」は令和2年度に36,099世帯となり、平成27年度から3,520世帯増加しています。
市内の千里ニュータウン地区(豊中市域)では、集合住宅の建て替えにより若い世代の入居が進んだことで、高齢化率そのものは横ばいから微減の傾向にあるとされていますが、高齢者の人口自体は増え続けているという報告もあります。つまり、建物が新しくなっても、高齢の住民が減っているわけではないというのが実情です。
「まだ元気だから大丈夫」が通用しない理由
ここで重要なのは、任意後見契約も家族信託も、本人の判断能力が十分にあるうちにしか契約できないという点です。「まだ元気だから、もう少し先でいい」と先延ばしにしているうちに判断能力が低下してしまうと、これらの制度はどちらも利用できなくなります。早めに情報を集め、準備を進めることが何より重要です。
任意後見制度とは|仕組みとメリット・デメリット
契約の仕組み
任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、自分が信頼できる人(任意後見人)との間で、公正証書によって契約を結んでおく制度です。実際に判断能力が低下した後、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点で、契約の効力が発生し、任意後見人が本人に代わって財産管理や契約行為を行えるようになります。
任意後見人には、家族を選ぶことも、弁護士や司法書士などの専門家を選ぶこともできます。また、複数の任意後見人を選んで、財産管理は家族、身上監護に関する専門的な判断は専門家、というように役割を分担させることも可能です。契約の内容は、本人と任意後見人になる人との話し合いで自由に決められるため、「どこまでの権限を任せるか」を具体的に定めておくことが重要です。
メリット
任意後見制度の大きなメリットは、本人が元気なうちに、自分の意思で後見人となる人を選べるという点です。家族を指定することも、専門家を指定することもできます。また、任意後見契約が登記されていれば、原則として、後述する法定後見よりも任意後見が優先されます。
デメリット
一方で、いくつかの注意点もあります。
- 開始までにタイムラグがある:契約を結んでも、実際に判断能力が低下し、家庭裁判所が監督人を選任するまでは効力が発生しません
- 取消権がない:本人が悪質な勧誘などで不利な契約を結んでしまっても、任意後見人にはそれを取り消す権限がありません
- 財産管理の自由度が制限される:「本人の利益の保護」が前提となるため、積極的な資産運用や、家族への生前贈与などは認められにくく、不動産の売却・活用には家庭裁判所や監督人の確認が必要になる場合があります
- 継続的な費用がかかる:任意後見監督人への報酬として、月額1万〜3万円程度が、本人が亡くなるまで継続的に発生するのが一般的です
これらのデメリットのうち、特に見落とされやすいのが「開始までのタイムラグ」です。契約を結んだからといって、すぐに財産管理を代行できるわけではありません。判断能力の低下が疑われてから、家庭裁判所への申立て、監督人の選任という手続きを経る必要があり、この間は家族が代わりに動くことができません。「もしものときにすぐ対応できる」という誤解をしないよう注意が必要です。
家族信託とは|仕組みとメリット・デメリット
契約の仕組み
家族信託は、本人(委託者)が、子などの信頼できる家族(受託者)との間で信託契約を結び、財産の管理・運用・処分を任せる制度です。契約には3者が登場します。
- 委託者:将来の認知症などに備えて財産を預ける人(親など)
- 受託者:財産を預かって管理する人(子など)
- 受益者:財産管理によって利益を得る人(多くの場合、委託者本人)
家族信託の大きな特徴は、財産の「名義」と「利益を受け取る権利」を分けて考える点にあります。信託契約を結ぶと、財産の名義は受託者(子など)に移りますが、その財産から生じる利益(家賃収入や売却代金など)は、引き続き受益者(多くの場合は親本人)が受け取ります。つまり、名義は子に移っても、実質的な財産の利益は親自身のために使われ続けるという仕組みです。
メリット
家族信託の最大のメリットは、契約を結んだ時点ですぐに財産管理を始められることです。任意後見のように、判断能力の低下を待って家庭裁判所の手続きを経る必要がありません。また、信託契約の内容次第で、不動産の売却や管理、収益物件の運用など、比較的柔軟な財産管理を行えるのも特徴です。
デメリット
家族信託にも、検討すべき注意点があります。
- 初期費用が高い:信託の設計、契約書の作成、不動産がある場合の信託登記などで、30万円〜100万円程度の初期費用がかかることが一般的です。任意後見契約(公正証書の作成費用で3万円〜5万円程度)と比べると、初期投資は大きくなります
- 受託者の事務負担が大きい:受託者は、信託専用の口座管理、帳簿の作成、受益者への定期的な報告義務など、継続的な事務を担うことになります。家族が受託者になる場合は、この負担を十分理解したうえで引き受けてもらう必要があります
- 契約内容の設計に専門知識が必要:信託する財産の範囲や、受託者の権限、信託の終了時期などを契約書に盛り込む必要があり、専門家の関与が欠かせません
また、信託できる財産や、受益者が亡くなった後に信託を引き継がせる「受益者連続型信託」には、法律上30年という期間の制限が設けられています。長期的な資産承継を考える場合は、こうした制度上の制約も踏まえて設計する必要があります。
任意後見と家族信託、どちらを選ぶべきか
比較表
| 項目 | 任意後見 | 家族信託 |
|---|---|---|
| 開始のタイミング | 判断能力低下後、家庭裁判所が監督人を選任してから | 契約締結後すぐに開始可能 |
| 初期費用の目安 | 数万円程度(公正証書作成費用) | 30万円〜100万円程度 |
| 財産管理の自由度 | 本人の利益保護が前提で制限される | 契約内容次第で比較的柔軟 |
| 身の回りの契約行為(身上監護) | 対応できる(施設入所契約など) | 原則として対応できない |
| 継続費用 | 監督人報酬が継続的に発生 | 契約内容によるが、後見ほどの継続費用は生じにくい |
「財産管理は信託で、身の回りの契約行為は任意後見で」という併用の考え方
この2つの制度は、どちらか一方を選ばなければならないわけではありません。家族信託は、預貯金や不動産といった「財産」の管理には強い一方、施設への入所契約や医療に関する同意といった「本人の身の回りの契約行為(身上監護)」には対応できません。そこで、財産管理は家族信託で柔軟に対応しつつ、身上監護の部分は任意後見契約で補う、という両制度を組み合わせる方法が、実務上はよく検討されます。
例えば、自宅を家族信託の対象にしておけば、将来、親が施設に入所する際に自宅を売却して入所費用に充てることが、受託者の判断でスムーズに行えます。一方で、実際に施設と入所契約を結ぶ、あるいは医療機関での治療方針に同意するといった行為は、家族信託の受託者の権限には含まれないため、任意後見契約で別途備えておく必要があります。「財産」と「身の回りのこと」を、別々の制度でカバーするとイメージすると分かりやすいでしょう。
自分たちのケースに合わせた選び方の目安
- 不動産の売却や活用を柔軟に行いたい場合:家族信託が向いています
- 施設入所など、本人の身の回りの契約も任せたい場合:任意後見契約、または家族信託との併用を検討します
- 財産の規模がそれほど大きくなく、初期費用を抑えたい場合:任意後見契約のみで対応できることもあります
どちらが適しているかは、財産の内容や、家族の状況によって異なります。例えば、実家の不動産を複数の家族で将来どう扱うかという方針が定まっているご家庭では、家族信託によって受託者があらかじめ柔軟に動ける体制を整えておくメリットが大きくなります。一方で、財産のほとんどが預貯金で、かつ介護施設の契約など身の回りの手続きへの備えを重視したいご家庭では、任意後見契約を軸に検討するほうがシンプルに進められることもあります。専門家に相談しながら、ご自身の状況に合った組み合わせを検討することをおすすめします。
対策を先延ばしにするとどうなるか
判断能力が低下してからでは、どちらも契約できない
任意後見契約も家族信託も、本人に契約を結ぶだけの判断能力があることが前提です。認知症が進行し、判断能力が失われた状態になってからでは、どちらの制度も新たに利用することはできません。
その場合に残る選択肢は「法定後見制度」のみ
判断能力が低下した後に利用できるのは、家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」です。法定後見は、すでに判断能力を失ってしまった場合の事後的な救済策という位置づけです。
法定後見は、後見人を自分や家族で選べるとは限らない
法定後見では、申立ての際に後見人の候補者を挙げることはできますが、最終的に誰を後見人に選任するかは家庭裁判所の判断になります。財産の状況によっては、家族ではなく、弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選ばれることもあります。専門職が後見人になった場合、本人が亡くなるまで継続的に報酬を支払う必要があり、その金額や支払い期間は家族が選べるものではありません。「自分の信頼する家族に財産管理を任せたい」という希望がある場合は、判断能力があるうちに任意後見契約や家族信託を準備しておくことが欠かせません。
豊中で相談できる窓口の選び方・よくある質問
司法書士・税理士が連携した窓口を選ぶメリット
家族信託の契約書作成や不動産の信託登記には司法書士が、将来の税務上の影響については税理士が関わることがあります。あらかじめ連携している窓口であれば、それぞれを個別に探す手間をかけずに、制度の設計から手続きまで進められます。
よくある質問
Q. 親がすでに認知症の疑いがある場合はどうすればいいですか? 判断能力の状況によっては、任意後見契約や家族信託をすでに結べない可能性があります。まずは早めに専門家に相談し、現時点でどの制度が利用できるか、あるいは法定後見の検討が必要かを確認することをおすすめします。
Q. 信託する財産が少なくても家族信託は利用できますか? 制度上、財産の最低額に決まりはありません。ただし、初期費用(30万円〜100万円程度が目安)に対して、信託する財産の規模が小さいと、費用対効果が見合わない場合もあります。財産の内容を踏まえて、任意後見など他の選択肢とあわせて検討することをおすすめします。
Q. 相談だけでも大丈夫ですか? はい、状況の整理のためのご相談だけでも問題ありません。ご家族の状況に合わせて、どちらの制度が適しているか、あるいは組み合わせが必要かを一緒に整理していきます。
Q. 任意後見契約や家族信託を結んだ後、気が変わったら解約できますか? 任意後見契約は、効力が発生する前であれば、公証人の認証を受けた書面によって解除することができます。家族信託も、契約書の内容次第では、委託者の意思で信託を終了させる条項を設けておくことが可能です。契約時に、将来の見直しの可能性についても話し合っておくと安心です。
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