認知症で銀行口座が使えなくなる前に|吹田市で今できる対策
「親が認知症になると、銀行口座が凍結されて、お金が引き出せなくなる」。こうした話を聞いて、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。親御さんの生活費や、施設の費用、医療費を、口座から支払えなくなれば、家族の負担は一気に重くなります。
結論からお伝えすると、認知症になった場合の口座は、金融機関が取引を制限することがあり、その対応は金融機関ごとに異なります。だからこそ、判断能力が十分なうちの備えが重要です。この記事では、口座が使えなくなる仕組み、すでに引き出せなくなったときの対応、予防策、やってはいけないこと、死亡による取引停止との違い、吹田市での相談先の選び方を解説します。
認知症で銀行口座が使えなくなる仕組み
「凍結」の実態は、取引の制限
一般に「口座の凍結」と呼ばれますが、認知症の場合は、金融機関が、名義人の判断能力が低下していると把握した場合に、取引を制限する運用がとられることがあります。たとえば、本人が窓口に来ても意思の確認が難しい場合や、家族から「親が認知症になった」と連絡を受けた場合などです。
本人の意思確認が原則
預金の払出しや解約は、預金者本人の意思に基づくものです。全国銀行協会が2022年5月に作成した資料でも、預金の払出しには、原則として預金者本人の意思確認が必要とされています。そのため、判断能力が低下した本人に代わって、家族が自由に払出しを行うことは、原則としてできません。
認知症と死亡は別の話
「口座の凍結」という言葉は、亡くなった方の口座についても使われます。認知症による取引の制限と、死亡による取引の停止は、まったく別の仕組みです。亡くなった場合は、金融機関が死亡を把握した時点で取引が停止され、相続の手続きが必要になります(詳しくは後述します)。認知症の対策を考えるときは、この2つを混同しないようにしましょう。
取扱いは金融機関ごとに異なる
どの時点で取引を制限するか、どのような確認をするか、どのような手続きを案内するかは、金融機関ごとに異なります。また、同じ金融機関でも、窓口や状況によって対応が異なる場合があります。「うちの親の口座が、いつ、どうなるか」は、一律には言えません。
取引の制限が表面化しやすい場面
口座の問題は、次のような場面で、気づかれることが多くあります。
- 親御さん本人が窓口で、暗証番号を思い出せず、手続きが進まない
- キャッシュカードや通帳を紛失し、再発行の手続きで、本人の意思確認が必要になる
- 定期預金の解約や、まとまった金額の払出しを、窓口で申し出た
- 家族が、「親が認知症で、代わりに手続きしたい」と窓口で伝えた
こうした場面で、金融機関が本人の状態を確認し、その後の取引の扱いを決めることがあります。「まだ引き出せているから大丈夫」と考えず、親御さんの様子に変化を感じた時点で、備えを始めることが大切です。
すでに引き出せなくなったときの対応
まず、金融機関に状況を伝えて確認する
すでに口座から引き出せなくなった場合は、まず、その金融機関に状況を伝え、どのような手続きが可能かを確認してください。必要な書類や、利用できる制度は、金融機関ごとに異なります。
限定的に払出しに応じる運用が想定されている
全国銀行協会の資料(2022年5月)によると、本人が意識不明になるなどして、親族が医療費や介護費の払出しを求める場面は、日常的に起きているとされています。成年後見制度を案内することが原則ですが、手続きに時間がかかるため、人道的な観点から、払出しに応じることも想定されています。資料が整理している主な判断のポイントは、次の通りです。
- 本人の状態の確認:診断書の写しなどにより、客観的に状態を把握する
- 依頼人の範囲:依頼人と本人の関係に応じて、応じる範囲を限定する
- 対象の預金:解約を要しない普通預金が中心
- 資金の使途:医療費や施設入居費など、本人のために必要な資金であることが明らか
- 金額・回数の上限:上限を設けることが考えられる
- 出金の方法:使途どおりに使われるよう、本人の口座から費用の請求者へ直接支払うことを基本とする
- 他の制度への引継ぎ:極めて限定的な対応であることを理解してもらい、成年後見制度などを案内する
ただし、これは金融機関側の判断ポイントを整理した資料であり、すべての金融機関が同じ対応をとるとは限りません。また、あくまで例外的・限定的な対応であり、払出しが保証されるわけではない点には、注意が必要です。
金融機関に相談する前に、準備しておくこと
金融機関に払出しを相談する場合は、一般に次のような資料があると、状況を伝えやすくなります。必要なものは金融機関ごとに異なるため、事前に確認してください。
- 本人の状態が分かる資料:医療機関の診断書の写し、介護保険の認定結果など
- 資金が必要な理由が分かる資料:入院費や施設の費用の請求書、見積書など
- 本人との関係が分かる資料:戸籍謄本、住民票など
- 本人の口座の情報:金融機関名、支店名、口座番号(通帳やキャッシュカードの有無)
- 相談する人の本人確認書類
支払先に直接振り込む形が基本とされているため、請求書や、振込先の情報は、特に重要です。また、金額や回数に上限が設けられることがあるため、必要な金額と時期を、あらかじめ整理しておきましょう。
法定後見の申立て
継続的に財産管理が必要な場合は、家庭裁判所に法定後見の申立てをして、後見人を選んでもらう方法が基本になります。本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。後見人が選任されれば、後見人が、金融機関で、本人に代わって手続きを行えるようになります。
なお、法定後見で選ばれた後見人が、本人の居住用の不動産(住んでいた、または住む予定の建物や土地)を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法第859条の3)。法定後見の仕組みや注意点は、別の記事で詳しく解説しています。[親の認知症と財産管理についてはこちら]
【予防策】判断能力が十分なうちにできる口座の対策
対策の比較
| 対策 | 口座への効果 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 金融機関の代理人手続き(代理人カードなど) | 本人の意思に基づき、家族が代理で引き出せる場合がある | 金融機関ごとに制度が異なる。判断能力が低下した後は、利用できなくなる場合がある |
| 任意後見契約 | 判断能力の低下後、任意後見人が金融機関で手続きできる | 契約しただけでは効力が生じない。監督人の選任が必要 |
| 家族信託(信託口口座) | 受託者が、信託の目的に沿って口座を管理できる | 信託口口座の取扱いの可否・条件は、金融機関ごとに異なる |
| 見守り契約 | 本人の状況を定期的に確認し、対応のタイミングを逃さない | 財産管理の権限はない |
| 日常生活自立支援事業 | 日常的な金銭管理の支援を受けられる場合がある | 利用条件や費用は、社会福祉協議会などに確認が必要 |
金融機関独自の制度を確認する
金融機関によっては、独自の代理人制度や、財産管理のサービスを用意している場合があります。たとえば、あらかじめ代理人を指定しておく制度などです。ただし、制度の有無、内容、利用できる条件は、金融機関によって異なります。親御さんが利用している金融機関に、判断能力が低下した場合の取扱いを、事前に確認しておくことをおすすめします。
家族信託の信託口口座は、金融機関ごとに対応が違う
家族信託では、信託のための専用の口座(信託口口座)を作ることが多くあります。しかし、信託口口座の取扱いの可否や条件は、金融機関ごとに異なります。信託を設計する前に、利用予定の金融機関に、取扱いを確認しておくことが重要です。家族信託の仕組みは、別の記事で解説しています。[吹田市で家族信託を行政書士に相談するなら|選ぶ基準と進め方]
任意後見で備える
任意後見契約を結んでおけば、判断能力が低下した後、任意後見監督人が選任されることで、任意後見人が、契約で定めた範囲で、金融機関での手続きを行えます。契約の手続きや費用の目安は、別の記事で詳しく解説しています。[吹田の任意後見契約|手続きの流れと費用を3段階で解説]
口座の「棚卸し」をしておく
対策を考える前提として、親御さんの口座がどの金融機関に、いくつあるかを、把握しておくことが重要です。
- 給与や年金の受取口座、公共料金の引落口座、貯蓄用の口座を、一覧にする
- 通帳のないネット銀行や、ネット証券の口座は、見つけにくいため、親御さんの協力を得て確認する
- 通帳、印鑑、キャッシュカードの保管場所を、家族で共有する
- 使っていない口座は、整理を検討する(口座が多いほど、手続きの負担が増えます)
親御さんと一緒に一覧を作ることは、将来の備えについて話し合うきっかけにもなります。
親の意思の確認が最優先
これらの対策は、すべて親御さん本人の意思が出発点です。家族だけで進めたり、本人の意向を確認せずに契約したりすると、後でトラブルになるおそれがあります。親御さんが何を心配しているのか、誰に任せたいのかを、丁寧に聞くことから始めましょう。
やってはいけないこと(口座編)
親のキャッシュカードで、無断で引き出す
親御さんのためを思ってしたことでも、本人の同意がないまま、キャッシュカードを使って引き出すと、トラブルのもとになります。他の兄弟姉妹から使い込みを疑われたり、相続の際に争いになったりすることがあります。
窓口で、親になりすまして手続きをする
窓口で、親御さんの署名を代わりに書いたり、親御さん本人になりすましたりすると、民事上・刑事上の問題になるおそれがあります。たとえ善意であっても、避けてください。
使い道の記録を残さない
やむを得ず、親御さんの生活費のために、親御さんの口座から支払う場合も、金額と使い道を、領収書などで記録しておくことが大切です。記録がないと、後で説明ができず、家族間の不信感につながります。
死亡による取引停止と、仮払い制度(別の話として)
死亡を把握されると、取引が停止される
認知症の対策とは別に、亡くなった場合の口座の扱いも、整理しておきましょう。金融機関が、名義人の死亡を把握すると、口座の取引が停止され、相続の手続きが必要になります。相続人全員の合意(遺産分割協議)がまとまるまで、預貯金を自由に引き出すことは、原則としてできません。
遺産分割前の預貯金の払戻し制度
遺産分割が終わる前でも、葬儀費用や生活費のために、一定の範囲で預貯金を引き出せる制度があります(民法第909条の2)。2019年7月1日以後の相続が対象で、金融機関によると、単独で払い戻せる額は、次の式で計算されます。
相続開始時の預貯金の額(口座ごと) × 1/3 × 払戻しを受ける相続人の法定相続分
ただし、同一の金融機関からは、上限150万円までとされています(金融機関ごと)。必要な書類や手続きは、金融機関によって異なるため、事前に確認してください。この制度は、認知症の対策とは別の、相続の場面の制度である点に注意してください。戸籍の集め方など、相続手続きの基本は、別の記事で解説しています。[吹田市役所での戸籍の取得方法についてはこちら] [吹田の兄弟相続についてはこちら]
吹田市での相談先と、専門家の選び方
一般的な相談窓口
認知症や、財産管理に関する相談は、地域包括支援センターなどの、高齢者の総合相談窓口で受け付けています。成年後見制度の情報提供なども、最初の相談先として活用できます。窓口の名称や連絡先、受付時間は、変更されることがあるため、吹田市の公式サイトで最新の情報を確認してください。
専門家の役割分担
口座の対策には、複数の専門家が関わります。
- 司法書士:法定後見の申立ての支援、不動産の登記
- 行政書士:任意後見契約書、財産管理等委任契約書などの作成支援
- 税理士:相続税、贈与税などの税務
- 弁護士:争いのある案件の代理
あらかじめ連携している窓口であれば、それぞれを自分で探す手間が省け、全体を見通して相談できます。ただし、業務は専門職ごとに分かれており、窓口がすべてを一括で代行するわけではありません。誰が何を担当するのかを、依頼前に確認しておきましょう。
費用の確認点
費用は、制度や専門家によって異なります。見積もりを取る際は、何の費用が、いつ、どれだけ発生するのかを、書面で確認してください。紹介に伴う手数料の有無も、確認しておくと安心です。
【要記入:相談実績の件数、提携している司法書士・行政書士・税理士の体制、対応エリア、吹田市での相談の方法(来所・オンライン・出張など)を、貴事務所の実際の内容でご記入ください】
吹田市では、終活に関する相談も受け付けています。[吹田市の終活相談についてはこちら] [北摂の相続・終活の無料相談についてはこちら]
よくある質問・まとめ
よくある質問
Q. 認知症と診断されたら、すぐに口座が使えなくなりますか? 診断を受けたからといって、直ちに口座が使えなくなるとは限りません。金融機関が、名義人の判断能力が低下していると把握した場合に、取引を制限する運用がとられることがあります。対応は金融機関ごとに異なります。
Q. 親の通帳やキャッシュカードを預かって、生活費を管理していいですか? 本人の同意のもとで管理を任せられる場合もありますが、同意の確認が難しい場合や、金額が大きい場合は、トラブルになりやすいため注意が必要です。記録を残すとともに、任意後見や家族信託などの正式な備えを検討してください。
Q. 施設の費用が払えなくなったら、どうすればいいですか? まず、金融機関と、施設に、状況を伝えて相談してください。金融機関によっては、本人のために必要な費用について、限定的に払出しに応じる場合がありますが、保証されるものではありません。継続的な対応が必要な場合は、法定後見の申立てを検討します。
Q. 代理人カードは、認知症になっても使えますか? 金融機関ごとに取扱いが異なります。判断能力が低下した後は、利用が制限される場合もあるため、事前に確認してください。
Q. 相談だけでも大丈夫ですか? はい、何から始めればよいか分からない段階でのご相談でも問題ありません。状況を伺いながら、適した選択肢を整理します。
まとめ
認知症で、口座の取引が制限されるかどうかは、金融機関の運用によって異なります。すでに引き出せなくなった場合は、金融機関に相談し、継続的な管理が必要なら、法定後見を検討します。これから備える場合は、判断能力が十分なうちに、任意後見や家族信託などの備えを進めることが重要です。なお、成年後見制度は、2026年6月に見直しの改正法が成立しており、施行日は未定です(それまでは現行制度が続きます)。まずは、北大阪相続遺言相談窓口の無料相談を活用頂き、状況を整理するところから始めてみてください。


