公正証書遺言の作り方|公証役場での手順・必要書類・費用を最新版で解説
「遺言書を残したいけれど、公証役場で何をすればいいのかわからない」
「費用はいくらかかる?」
「自宅から作れるって本当?」
こうした疑問に答えるため、公正証書遺言の作成手順を、初めての方にもわかるようにまとめました。
この記事でわかること
- 公正証書遺言とは何か、自筆証書遺言との違い
- 公証役場で作成する6つのステップ
- 必要書類のチェックリスト
- 費用の仕組みと目安
- 証人になれない人の条件
- 2025年10月から始まったデジタル化・オンライン作成
- 失敗しないための注意点
1. 公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を確認しながら作成する遺言書です。公証人は法律の専門家で、元裁判官・検察官などの法律実務経験者が務めます。原本は公証役場で保管されます。
自筆証書遺言との違い
| 項目 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成者 | 公証人 | 本人(全文自書が原則) |
| 証人 | 2名必要 | 不要 |
| 形式不備のリスク | 極めて低い | 高い |
| 紛失・改ざん | 原本を公証役場で保管するため心配が少ない | 自己保管だとリスクあり(法務局の保管制度で軽減可) |
| 費用 | 公証人手数料がかかる | 基本的に無料(法務局保管は所定の手数料) |
| 家庭裁判所の検認 | 不要 | 必要(法務局保管の場合は不要) |
こんな方には公正証書遺言がおすすめです
- 相続人同士の関係に不安がある
- 不動産や事業用資産など、財産が複雑である
- 内縁の配偶者や相続人以外に財産を渡したい
- 確実に執行される遺言を残したい
2. 公証役場での作成手順【6ステップ】
ステップ1:財産と相続人を整理する
まず次の3点を書き出します。
- 財産:不動産、預貯金、株式・投資信託、保険、車など
- 相続人:配偶者、子、親、兄弟姉妹など
- 希望:誰に、何を、どれだけ渡したいか
ステップ2:必要書類を集める
詳細は「3. 必要書類」で解説します。
ステップ3:公証役場に連絡し、事前相談をする
遺言内容のメモと資料を公証人に伝え、文案を調整します。多くの場合、文案はメールなどのやり取りで固めていきます。
ステップ4:証人2名を手配する
自分で依頼するか、公証役場に紹介してもらいます(紹介は有料です)。弁護士・司法書士などの専門家に証人を依頼する方法もあります。
ステップ5:作成当日の手続き
公証人が遺言内容を読み上げ(または閲覧させ)、遺言者と証人が内容を確認し、署名・押印して完成します。
ステップ6:正本・謄本を受け取り、保管する
原本は公証役場に保管され、遺言者は正本・謄本を受け取ります。遺言執行者に指定した人にも、遺言の存在を伝えておくと安心です。
3. 必要書類チェックリスト
- 遺言者の印鑑証明書(発行から3か月以内)と実印
- 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本
- 相続人以外に遺贈する場合、受遺者の住民票
- 不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書(または納税通知書)
- 預貯金の通帳の写し(金融機関名・支店名・口座番号がわかるもの)
- 証人の氏名・住所・生年月日・職業がわかる資料
- 遺言執行者に指定する人の情報
ポイント:必要書類は遺言の内容によって変わります。事前相談の際に、公証人から案内された書類を優先してください。
4. 費用はいくら?
公正証書遺言の費用は、公証人手数料が中心です。財産の価額(遺言で渡す財産の額)に応じて決まります。
2025年10月に手数料が改定されました。 公証人手数料令が改正され、約20年ぶりの見直しとなりました。この改正は公証人手数料令の変更として2025年10月1日に実施されました。また、改定により、従来より安くなるケースも高くなるケースもあると解説されています。
遺言加算にも注意が必要です。 目的の価額の合計が1億円以下の場合に限り、遺言者1人あたり1万3,000円が加算されます。
費用の内訳イメージ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公証人手数料 | 財産の価額に応じて算出(受遺者ごとの価額を合算) |
| 遺言加算 | 合計1億円以下の場合に加算 |
| 証人の費用 | 公証役場の紹介の場合、1人あたり1万円前後が目安 |
| 書類の取得費 | 戸籍謄本・印鑑証明書など数千円程度 |
| 専門家報酬 | 弁護士・司法書士などに依頼する場合は別途 |
正確な金額は、事前相談の際に公証人が見積もってくれます。手数料の最新の表は日本公証人連合会のサイトで確認できます。
5. 証人になれない人
次の人は証人になれません(民法974条)。
- 未成年者
- 推定相続人
- 受遺者
- 推定相続人・受遺者の配偶者と直系血族
- 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人
注意:知人に頼む場合は、相続人の関係者でないか必ず確認してください。適格な証人がいない場合は、公証役場の紹介や専門家への依頼が確実です。
6. 【最新】公正証書遺言はオンライン(リモート)でも作れる
2025年10月1日から、公正証書の作成手続がデジタル化されました。 嘱託(依頼)を電子署名付きでオンライン申請できるようになり、一定の要件のもとでWeb会議を利用した作成も選べます。公正証書の原本も原則として電子データで作成・保存されます。 gmosign
何が変わったのか
- Web会議(リモート方式):嘱託人の希望があり、公証人が相当と認める場合に限り、ウェブ会議を利用した作成が可能です。自宅や施設など、公証役場以外の場所から参加できます。 koshonin
- 電子サイン:嘱託人は電子サインのみでよく、押印は不要になります。 koshonin
- 受け取り方法:書面での受け取り、メールでのダウンロード、自前のUSBメモリなどへの保存の3つから選べます。 koshonin
- 対応状況:Web会議による面接は、昨年末までに全国のすべての公証役場で対応可能になったと、第二東京弁護士会が伝えています。 niben
注意点
- リモート方式は誰でも自動的に使えるわけではなく、公証人の判断が必要です。
- 遺言者の意思確認や本人確認のため、通信環境や機器、電子証明書などの準備が求められます。
- 詳細な要件や操作方法は、法務省と日本公証人連合会の案内、利用する公証役場で必ず確認してください。
従来どおり、公証役場で対面して作る方法も選べます。高齢や病気、遠方在住で公証役場へ行くのが難しい方は、リモート方式や出張(公証人が病院・自宅へ出向く方式)の相談をしてみてください。
7. 失敗しないための5つの注意点
- 遺留分に配慮する
兄弟姉妹以外の相続人には、最低限の取り分(遺留分)があります。これを大きく侵害する内容だと、相続開始後に請求され、争いの原因になります。 - 予備的条項を入れる
受遺者が遺言者より先に亡くなった場合に備え、「その場合は○○に相続させる」と代替の指定をしておきます。 - 遺言執行者を指定する
預貯金の解約や不動産の名義変更など、相続後の手続きをスムーズに進められます。 - 財産を特定して記載する
不動産は登記簿どおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号で特定します。あいまいな記載は手続きの支障になります。 - 定期的に見直す
財産や家族の状況は変わります。作成後も内容を見直し、必要なら作り直しましょう。作り直しても、公正証書遺言の効力は新しい遺言が優先されます(内容が抵触する部分)。
8. 遺言書の条文構成(例)
公正証書遺言は、一般的に次のような構成になります。
- 表題:遺言公正証書
- 第1条:財産の承継(誰に何を相続させるか)
- 第2条:遺贈(相続人以外への財産の承継)
- 第3条:その他の財産の帰属(記載漏れ・後から取得した財産)
- 第4条:予備的条項
- 第5条:遺言執行者の指定
- 第6条:付言事項(家族へのメッセージ。法的拘束力はありません)
- 末尾:作成年月日と、遺言者・証人・公証人の署名押印
よくある質問(FAQ)
Q. 公正証書遺言は、自分ひとりで公証役場へ行けば作れますか?
A. 証人2名が必要なので、ひとりでは作れません。証人は自分で手配するか、公証役場に紹介してもらえます。
Q. 作成にかかる期間はどれくらいですか?
A. 事前相談から完成まで、書類が揃っていれば数週間程度が目安です。財産が多い場合や文案の調整に時間がかかる場合は、さらに長くなります。
Q. 遺言の内容を後から変えられますか?
A. 変えられます。新しい遺言を作成すれば、内容が抵触する部分は新しい遺言が優先されます。
Q. 家族に内緒で作れますか?
A. 作れます。ただし、遺言執行者や信頼できる家族に、存在と保管場所だけは伝えておくと安心です。
Q. 認知症の場合は作れますか?
A. 遺言には「遺言能力」(内容を理解し判断できる力)が必要です。診断があっても状態によりますが、公証人が意思確認を行います。心配な場合は、医師の診断書を用意するなど、早めに公証役場や専門家へ相談してください。
Q. 弁護士や行政書士、司法書士に頼んだほうがいいですか?
A. 財産が多い場合、家族関係が複雑な場合、遺留分の問題がありそうな場合は、専門家への相談をおすすめします。
まとめ
- 公正証書遺言は、形式不備や紛失のリスクが低く、確実に残せる遺言です。
- 手順は財産整理 → 書類収集 → 事前相談 → 証人手配 → 作成 → 保管の6ステップです。
- 2025年10月からデジタル化され、要件を満たせばリモートでも作成できます。
- 手数料は2025年10月に改定されているため、最新の金額を必ず確認してください。
まずは、財産の一覧を作ることから始めてみてください。準備ができたら、お近くの公証役場に行くか北大阪相続遺言相談窓口に事前相談の連絡をしましょう。


